サツキ(伊勢シリーズ)の長穂ミストセル挿しによる早期コンテナ栽培法


[要約]
サツキ(伊勢シリーズ)は、8月に慣行の2倍長の挿し穂を、発根の優れるミストセル挿し法(セル成型挿し・ミスト管理)を用いて挿し木することで、3月鉢上げが可能となり、春期の生育が促進することで生育が6ヶ月間短縮され、15ヶ月間で規格サイズにできる。

[キーワード]サツキ(伊勢シリーズ)、ミストセル挿し法、コンテナ栽培、挿し穂長

[担当]三重科技セ・農業研究部
[代表連絡先]電話:0598-24-6358
[区分]関東東海北陸農業・花き
[分類]技術・普及

[背景・ねらい]
  植木類の需要は、量販店等での個人消費が増加傾向にあり、輸送性、取り扱いの簡便性からコンテナ栽培が急速に伸びている。サツキでは同栽培法の導入が比較的遅れたが、現場では挿し木から約21ヶ月の栽培期間で出荷規格に育成する体系が組まれている。しかし、コンテナ栽培は生産コストが高いことから安価な生産技術の確立が求められている。
  そこで、平成16年度に本県が育成した「伊勢路紅」、「伊勢路紫」、「伊勢小町」の伊勢シリーズ3品種を対象に、挿し木苗の早期生産技術を確立し、栽培期間を既存体系より6ヶ月短縮した栽培体系を確立する。

[成果の内容・特徴]
1. 8月の挿し木をミストセル挿し法で行うことで、翌年3月時点での発根率が各品種とも90%以上となる。この時、発根程度2以上の良苗率は各品種とも70%以上であり、慣行の密閉挿し法(20%以下)に較べて著しく高めることができる(図1)。
2. ミストセル苗の鉢上げ8ヶ月後の樹容積は、伊勢路紫、伊勢小町では挿し穂長20cmが、伊勢路紅では30cmが最大となる(表1)。しかし、挿し穂長30cmでは頂芽優勢が働くため株張りが劣る。このため、出荷規格サイズの株張り及び樹高を得るためには各品種とも挿し穂長20cmが適当である(図2)。
3. 以上のことから、20cmの長い挿し穂でもミストセル挿し法を用いることで慣行鉢上げ期の5月に比べ2ヶ月早く鉢上げが可能となり、春芽の伸長が期待できるようになる。このため、8ヶ月の栽培期間で高さ25cm、株張り25cmの出荷規格サイズを得ることができるようになり、挿し木からの総栽培期間は15ヶ月と慣行コンテナ栽培より6ヶ月間短縮できる。

[成果の活用面・留意点]
1. サツキのコンテナ栽培農家における新栽培体系として活用できる。
2. 鉢上げ後の生育については、鉢用土及び施肥により異なる可能性がある。


[具体的データ]

図1  8月挿し木における挿し木法と3月時点での発根率との関係
表1 品種別の挿し穂長と樹容積の関係
図2 伊勢路紅における挿し穂長と肥培管理8ヶ月後の株張りとの関係

[その他]
研究課題名:新サツキのコンテナ栽培法の開発
予算区分:県単
研究期間:2005〜2007年度
研究担当者:鎌田正行、千田泰義、原  正之

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