糖度の高いトマト新品種「甘しずく」の育成


[要約]
トマト新品種「甘しずく」は、特別な栽培法を用いることなく、通常の栽培法で糖度が高い果実の生産が可能な促成栽培用F1品種である。

[キーワード]トマト、育種、果実形質、高糖度

[担当]群馬農技セ・生産技術部・園芸育種グループ 、野菜グループ
[代表連絡先]電話:0270-30-7799
[区分]関東東海北陸農業・野菜
[分類]技術・普及

[背景・ねらい]
  近年、根域制限や水切り栽培など特別な栽培法により高糖度なトマトが生産され、フルーツトマトなどと呼ばれ、消費者に受け入れられている。しかし、これらの生産には、多くのコストと労力を要している。そこで、通常の栽培法で糖度が高くて良食味なトマト果実の生産が可能な品種を育成する。

[成果の内容・特徴]
1. 育成経過
「甘しずく」は、ロシアから導入した品種に「ハウス桃太郎」を交雑したF1にミニトマト(品種名不詳)を交雑した後代から選抜した「群馬甘赤1号」を子房親、「群馬甘赤2号」を花粉親とした一代雑種である。
2. 「甘しずく」の特性
 
1)  「甘しずく」の促成栽培における果実糖度(Brix)は、6〜9%程度で「桃太郎はるか」よりも約2%高い(図1)。
2)  「甘しずく」の果色は赤、果形はやや腰高の球、子室数は4、5又は6、果肉は極めて硬い(図2表1)。
3)  「甘しずく」の果実重は80g程度で、収量は「ハウス桃太郎」に比べて60〜70%である(表2)。
4)  「甘しずく」の草勢は中程度、草姿はコンパクトで葉は小さい(表1)。
5)  「甘しずく」は萎凋病レース1に抵抗性で、葉かび病は発生しにくいが、TMVの抵抗性は持たない。

[成果の活用面・留意点]
1. 萎凋病レース1以外の土壌病害虫には抵抗性がないので、実用栽培では適合する台木用品種を用いた接ぎ木栽培を行う。
2. 生育後期の日中に頂部が萎凋する場合がある。
3. 夏秋栽培における果実糖度(Brix)は、5〜6%であり、促成栽培時よりも低い。
4. 種子配布は、当分の間群馬県内を優先する。


[具体的データ]

図1 「甘しずく」の果実糖度の推移 図2 「甘しずく」の果実
表1 「甘しずく」の特性
表2 「甘しずく」の収量

[その他]
研究課題名:海外遺伝資源活用による野菜の品種育成
予算区分:県単
研究期間:1994〜2005年度
研究担当者:山田文典、湯谷譲、多々木英男、牛尼正道、金井幸男
発表論文等:出願公表(平成18年10月23日)―出願番号第19252号

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