夏秋トマト栽培における収穫労力の軽減化のための適正着果数


[要約]
夏秋トマト栽培において初期・中期は3果、後期は4〜5果に調整することによって、8月、9月に集中していた収穫労力のピークが10月以降に分散化され、かつ、果実単価上昇により収益性は向上する。

[キーワード]夏秋トマト、着果制限、労力分散、収益性

[担当]岐阜中山間農研・試験研究部
[代表連絡先]電話:0577-73-2029
[区分]関東東海北陸農業・野菜
[分類]技術・普及

[背景・ねらい]
  飛騨地域の夏秋トマト栽培では、従来「3・3・4運動」として、第1果房3果、第2果房3果、第3果房4果に着果制限をすすめてきたが、8月、9月に収穫作業が集中するため、第4果房以降の摘果は省かれることが多く、中段以降の着果不良や果実肥大不足等によって、産地全体の10月以降の収量は減少する傾向であった。そこで、摘果程度が労力や収益性に及ぼす影響について評価を行ない、新しい摘果法について提案する。

[成果の内容・特徴]
1. 着果制限は、摘花と摘果を2段階で行い、摘花は、開花揃い時に鬼花を中心に果房当たり6花程度になるよう摘除し、多い場合は摘蕾も併せて実施する。さらに、ピンポン玉大に肥大した時期に、チャック・窓あき果を中心に摘除し、果房当たり3〜5果に制限する。これらの作業は、すべての果房について行う。
2. すべての果房の目標着果数を4果に制限すると1株あたりの総収穫果数は34個となり、総収量・可販収量は最も多い(表1上)。ただし、8月〜9月の収穫労力の集中が激しくなる(図1下)。
3. すべての果房の目標着果数を4果に制限する方法と初期・中期(第1〜第7果房)は3果、後期(第8〜第11果房)は4〜5果に制限する方法を比較すると、収量性はほぼ同等であるが(表1下)、後者の方が労力の平準化が図られ、さらに、単価の高い10月〜11月に収量が増加することから、収益性は向上する(図1上、図2)。
4. 初期・中期は3果、後期は4〜5果に制限する方法は、摘花・摘果労力はかかるが、多段での収穫が少ないため、上下の作業動線の短縮につながり、取り残しがないか何段も目を配る必要がなく、結果的に収穫労力が軽減され、総合的な作業時間は減少する。さらに、8月上旬〜9月上旬に集中した労力の分散化が図られる(図3)。

[成果の活用面・留意点]
1. 斜め誘引仕立てにおける成果である。


[具体的データ]

表1 着果数を異にして栽培したトマトにおける収量、平均果重、総収穫果数、正常果率、裂果発生率
図1 着果数を異にして栽培したトマトにおける旬別総収穫果数の推移 図3 現地実証ほにおける作業別労働時間の推移(平成16年)
図2 摘果方法と販売額(平成18年)

[その他]
研究課題名:高冷地に適した野菜の品種・栽培法の研究
予算区分:県単
研究期間:2004〜2006年
研究担当者:鈴木隆志、藤本豊秋、傍島千鶴、井之本浩美、中西文信

目次へ戻る