水田転作におけるウドの高畝マルチ栽培による湿害回避技術


[要約]
ウドの40cm高畝マルチ栽培は、摘心により倒伏が軽減され、生育初期に天候に左右されない安定した根株養成ができる湿害回避技術である。これにより生産性が向上し、管理作業が簡素化される。

[キーワード]ウド、湿害、高畝、マルチ被覆

[担当]栃木農試・黒磯分場
[代表連絡先]電話:0287-62-0209
[区分]関東東海北陸農業・野菜
[分類]技術・参考

[背景・ねらい]
  栃木県北部における水田転作の基幹作物であるウドは、平畝に定植し中耕培土時に20〜30cm程度の畝上げを行い排水性を確保しているが、湿害による生育抑制や不良芽の発生により生産が不安定である。そこで、40cm程度の高畝に定植し湿害を防止する高畝栽培技術を確立する。更に、高畝栽培では倒伏や畝が乾燥しやすく、中耕による除草管理ができない等の問題があったため、これらの改善策として高畝マルチ栽培の実用性を検証する。

[成果の内容・特徴]
1. 高畝栽培は畝間140cm、株間80cmで中耕培土による畝上げとほぼ同じ作業で約40cmの畝立て及びマルチ被覆を定植前に行う。根株の植え付け深さは慣行の平畝栽培では地表面下10cmに対して、高畝栽培は地表面上20cmになり、根の冠水部位を減少できる(図1)。
2. 全栽培期間の地下水位を20cmとした過湿圃場では、平畝栽培で葉色が淡くなる等の生育抑制による湿害が起きるが、高畝栽培では平畝のような湿害は起こらず、生育は良好である(表1)。
3. 高畝マルチ栽培は植え付け深さを10cm、摘心時期を7月下旬(茎長85cm程度)とすることで、倒伏が少なく、不良芽の発生も少なくなる(表2)。
4. マルチ資材は収量性において資材の種類にかかわらず平畝中耕培土より優れる(図2)。マルチ資材の中で黒ポリマルチが最も安価であること、更に生分解性や光分解性マルチより展張時に破けにくく、展張や後処理の作業性に優れることから、被覆資材として黒ポリマルチが適する(データ省略)。

[成果の活用面・留意点]
1. 高畝マルチ栽培は地上部生育が旺盛になるため、摘心作業が必須である。
2. 表1は地下水位を調整できる有底圃場で、他の試験は試験場内の水田転作圃場で行った結果である。


[具体的データ]

図1 高畝栽培と平畝栽培
表1 地下水位条件と冠水による湿害が根株に及ぼす影響
表2 高畝マルチ栽培の摘心時期及び植え付け深さが根株に及ぼす影響
図2 高畝マルチ栽培の収量及び出荷規格別割合

[その他]
研究課題名:ウド根株養成の安定技術確立
予算区分:県単
研究期間:2004〜2005年度
研究担当者:吉光寺徳子

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