葉菜類における固化培地利用によるセル成型苗の若苗定植の生育特性


[要約]
あらかじめ根鉢状に成型された固化培地を利用したセル成型苗は、従来培地育苗よりも若苗定植(本葉展開初期)でき、育苗日数の短縮や、春から盛夏季定植における活着及び生育促進などの効果がある。

[キーワード]葉菜類、固化培地、セル成型苗、若苗定植

[担当]長野野菜花き試・野菜部、佐久支場
[代表連絡先]電話:026 ? 278- 6848
[区分]関東東海北陸農業・野菜
[分類]技術・参考

[背景・ねらい]
  セル成型育苗では、根鉢が形成された後、崩れずに苗を引き抜けなければ定植作業が難しい。一方では、根鉢形成はすみやかな活着が妨げられる一因となる。そこで、根鉢形成前に若苗定植をするために、当初から培地が根鉢状に成型された固化培地資材の利用による、ハクサイ、キャベツ及びブロッコリーの生育に及ぼす影響について検討する。

[成果の内容・特徴]
1. 固化培地セル成型育苗は慣行培地による定植苗(本葉3〜4枚)より若い生育ステージ(本葉展開初期)に苗をセルトレイから抜き取りが可能で、育苗日数を7〜15日程度短縮できる(図1)。また、若苗定植は、活着後、直根性のハクサイでは慣行培地育苗よりも比較的太い根が伸び、根圏域が拡大し、直播きに近い生育特性を示す。
2. ハクサイ夏どり作型では、収穫時の生育は直播がもっとも旺盛で、ついで固化培地育苗、慣行培地育苗であり、それらの収穫までの生育差はそれぞれおよそ7日程度である。一方、秋どり作型では、定植時の生育差は収穫時まで縮まらない。以上のことから、温度上昇期には、若苗定植は慣行培地育苗よりも早く収穫でき、揃いも安定するが、温度下降期には必ずしもその効果は安定しない(表1)。
3. キャベツ秋どり作型では、定植後の生育は途中から固化培地セル成型育苗による若苗定植のほうが早く生育する。平均収穫日には大差はないが、若苗定植の生育量がやや大きい(表2)。
4. ブロッコリー夏どり作型では、固化培地セル成型育苗による若苗定植の生育が早く進み、収穫期が早まるとともに揃いが安定する(表3)。

[成果の活用面・留意点]
1. 固化培地は慣行培地と同程度の生育ステージの苗も利用できるが、特性を活かすには若苗(本葉展開初期〜1枚展開期)に定植する。
2. 定植後に温度が下降する作型や環境条件によっては、若苗定植が慣行定植苗よりも生育促進されるとは限らない。


[具体的データ]

表1 播種・育苗方法・定植時の生育ステージとハクサイの生育
表2 育苗培地の種類・定植時の生育ステージとキャベツの生育(平成17年)
表3 育苗培地の種類・定植時の生育ステージとブロッコリーの収穫日及び収穫時の生育(平成17年)
図1 ハクサイ定植時の固化培地セル成型若苗

[その他]
研究課題名:主要野菜の栽培技術改善
予算区分:県単
研究期間:2005 〜 2006年度
研究担当者:小沢智美、星野英正、小松和彦、臼井冨太

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