促成イチゴを省力・軽作業化する連続うね利用栽培の灌水同時施肥法


[要約]
出らいを基準に毎日必要量を液肥で施用する施肥法に、水分センサと少量高頻度灌水装置を利用した精密施肥・灌水制御法を組み合わせることにより、連続うね利用栽培において灌水・追肥の自動化が可能となり、窒素施用量を削減でき、生産性も高い。

[キーワード]イチゴ、連続うね利用栽培、精密施肥・灌水制御、省力・軽作業化、窒素削減

[担当]愛知農総試・園芸研究部・野菜グループ
[代表連絡先]電話:0561-62-0085
[区分]関東東海北陸農業・野菜
[分類]技術・参考

[背景・ねらい]
  促成イチゴの連続うね利用栽培は、愛知県内の篤農家が開発した栽培法である。うね立てが不要で、省力・軽作業化が可能なため、現地への普及が始まっているが、施肥法が明らかでなく生産が安定しない。そこで、追肥施肥法と水分センサを利用した即時制御灌水法を組み合わせ、灌水・追肥の自動化が可能な精密施肥・灌水制御法を開発する。

[成果の内容・特徴]
1. 連続うね栽培では全層施肥ができないので、施肥は濃度障害を避けるため追肥主体の灌水同時施肥で行う。基肥を慣行の約1/3(750mg/株)、追肥をビニル被覆後から開始し、出らいを基準として施用量を増減する。11月1日〜2月28日の間は、出らい後2週間は1日当たり8.5mg/株、次の出らいまで6.5mg/株、3月以降は8.5mg/株を液肥で施用する。なお、出らい日は、30%以上の株に出らいが認められた日とする。
2. 精密施肥・灌水法には、愛知農総試開発の少量高頻度灌水装置及び土壌水分センサ(土壌水分計測用テンシオメータ 特許 第3845674号)を使用する。センサはpF1.9(換算値)、灌水後のセンシング休止時間は30分に設定する(図1)。水分センサはドリップチューブの吐出口を避け、15cmの深さに設置する。点滴チューブはダブルウォール等給水量が一定のものを使用する。
3. 短日夜冷処理を行った苗を、9月10日にうね間120cm、株間20cm(8000株/10a)の2条植えで定植して(品種「とちおとめ」)、表1により試験を行うと、株当たり窒素施用量は、精密施肥・灌水区(自動区)及び手動区では、慣行区より2割減少できる。収量は、自動区が798g/株(6.4t/10a)、慣行区が794g/株(6.4t/10a)で同等であるが、手動区は722g/株(5.8t/10a)と劣る(図2)。糖度は、冬季(2月14日)、春季(4月8日)とも自動区が最も高く、手動区は慣行区とほぼ同等である(図3)。

[成果の活用面・留意点]
1. この栽培法は、大規模面積の企業的農家から高齢者・女性まで、省力・軽作業化のために連続うね利用栽培を取り入れる促成イチゴ農家に適する。
2. 施肥量が均一となるように、液肥施用には点滴チューブを使用する。また、施用量は、株あたり窒素施用量により表示している。


[具体的データ]

表1 試験区における施肥・灌水量設定と総窒素施用量
図1 少量高頻度灌水装置及び水分センサ(土壌水分計測用テンシオメータ)の設置状況
図2 精密施肥・灌水制御が株当たり収量に与える影響 図3 精密施肥・灌水制御が糖度に与える影響

[その他]
研究課題名:施設野菜の省力・高生産技術の確立
予算区分:県単
研究期間:2004〜2005年度
研究担当者:齋藤弥生子、矢部和則
発表論文等:齋藤・矢部 (2005) 愛知農総試研報 37:41-47

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