養液栽培ホウレンソウの培養液に尿素を活用すると硝酸塩濃度を削減できる


[要約]
ホウレンソウの養液栽培で培養液の全窒素量の50%を尿素に置換すると、生育を維持したまま地上部中の硝酸塩濃度を約40%下げられる。さらに尿素比率を80%以上に高めると、ニッケル添加でやや改善されるが生育が抑制される。しかし硝酸塩濃度は著しく低下する。

[キーワード]ホウレンソウ、硝酸塩濃度、尿素、ニッケル、養液栽培

[担当]三重科技セ・農業研究部・園芸研究課
[代表連絡先]電話:0598-42-6358
[区分]関東東海北陸農業・野菜
[分類]研究・参考

[背景・ねらい]
  ホウレンソウを硝酸態窒素に富む培養液で栽培すると、硝酸塩が地上部に高濃度に蓄積する。一方、培養液の主な窒素源をアンモニア態窒素にすると、硝酸塩の地上部中濃度は顕著に低下するが、生育が著しく抑制される。養液栽培の窒素源として尿素態窒素も利用できるが、植物体内の代謝過程でウレアーゼが必要であり、その構造及び活性化にニッケル(以下Ni)が深く関係している。そこで、尿素態窒素比率が50%を越える培養液による栽培がホウレンソウの生育や地上部の硝酸塩濃度に及ぼす影響について明らかにする。

[成果の内容・特徴]
1. 培養液の硝酸態窒素(以下硝酸)を尿素態窒素(以下尿素)に置き換えた場合(表1)、収穫時のホウレンソウ生体重は、両者を等量配合しても硝酸だけの場合と変わらない(図1)。
2. 尿素の比率が80%以上に高まると生育が抑制され(図1)、植物体の全窒素濃度も低下するが、全窒素濃度はNi添加により改善される(図2)。
3. 尿素比率を80%以上に高めた時にNiを添加すると、葉中の尿素の利用量が顕著に増加する(図2)。
4. 地上部の硝酸塩濃度は硝酸と尿素を等量配合した場合、慣行の60%まで削減できる。尿素比率を80%まで高めると硝酸塩濃度は著しく低下する(図3)。

[成果の活用面・留意点]
1. 硝酸塩濃度を低減化したホウレンソウの生産を目的とする生産現場に応用できる。
2. 尿素を培養液に添加しても電気伝導度(EC)値に影響しないため従来のECを基にした培養液管理を行うときには注意が必要である。


[具体的データ]

表1 各区の培養液組成(単位:mM/L)
図1 ホウレンソウの生体重(g/株) 図2 葉の全窒素および尿素態窒素含量
図3 尿素比率の異なる培養液で栽培したホウレンソウの硝酸塩濃度

[その他]
研究課題名:葉菜類における硝酸塩含量低減化技術の開発
予算区分:県単
研究期間:2004〜2006年度
研究担当者:小西信幸、礒崎真英、田中一久、名田和義(三重大生物資源)

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