近赤外分光法における既存検量式の精度確認と保守改善のシステム化


[要約]
近赤外分光法において、温度など測定環境の変動や機器の動作異常等に起因するスペクトルの変化による誤差の発生は、新規(検定用)試料のスペクトルを検量式用試料から作ったSIMCAモデルに当てはめることで予測でき、検量式改善の必要性が判断できる。

[キーワード]近赤外分光法、検量式、スペクトル、SIMCA、推定誤差、測定条件

[担当]愛知農総試・企画普及部・経営情報グループ、東三河農業研究所・茶業グループ
[代表連絡先]電話:0561-62-0085
[区分]関東東海北陸農業・茶業、共通基盤・情報研究
[分類]技術・参考

[背景・ねらい]
  近赤外分光法において、検量式の精度検定時に誤差が生じても、その誤差が化学分析値に起因するのかスペクトルに起因するのか、判断に苦しむことが多い。また、工場や野外等の温度制御ができない環境で採取したスペクトルから正しい推定値が得られるか確認の手段が求められる。
  そこで、推定時の誤差発生原因の確認と、温度制御ができない環境での測定における対応策のシステム化について検討する。

[成果の内容・特徴]
1. 近赤外分光法を用いた測定において、新試料が既存の検量式で正しく推定できるかどうかは、図1に示す手順で確認する。
2. 図中のSIMCA(Soft Independent Modelling of Class Analogy(主成分分析の残差を用いた判別法))モデルは、検量式作成時に予め作成しておく。ただし、検量式をPCR(主成分回帰)やPLSR(部分最小自乗回帰)で作った時は、その検量式をそのままSIMCAモデルとして用いることができる。
3. 機器の異常ではなく、新規試料の多くがSIMCAモデルから外れている場合は、それらの試料の一部を追加して検量式を改善する。
4. なお検量式作成時に、検量式用・検定用試料とも、SIMCAによってスペクトル的に同じクラスに属すと判定されても回帰結果から外れている試料は、化学分析値(実測値)に誤りがあったと判断されるので再度化学分析を行う(図2で○あるいは□で囲んだ試料)。

[成果の活用面・留意点]
1. 作成した検量式で、実用的な測定を行おうとする時に、対象試料をその検量式で正しく推定できるかどうか確認するために用いる。検量式改善の必要性の有無も判断できる。
2. 検量式作成、SIMCA判別とも、ソフトウェアは、The Unscrambler (CAMO, Norway)で行った。PCRや PLSRとSIMCAのできるソフトウェアなら、どれでもできると思われるが、表計算ソフト上での解析のためのデータの取出しなどについては可否を確認していない。


[具体的データ]

図1 検量式の精度確認と改善の過程を示すフローチャート
図2 SIMCAへの不適試料除去の実例と新試料のスペクトル追加による検量式の改善効果

[その他]
研究課題名:高品質茶生産技術の確立
予算区分:県単
研究期間:2001〜2004年度
研究担当者:大竹良知、辻正樹、木下忠孝

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