少肥栽培に有望なチャ品種の生産性と品質


[要約]
年間窒素施肥量40kg/10aの少肥栽培条件において、収量・品質からみて「やぶきた」より優れる品種は、煎茶では「みえうえじま」、「さえみどり」、「さやまかおり」であり、かぶせ茶では「みえうえじま」、「さやまかおり」である。

[キーワード]チャ、品種、少肥栽培適性、煎茶、かぶせ茶

[担当]三重科技セ・農業研究部・茶業研究室
[代表連絡先]電話:0595-82-3125
[区分]関東東海北陸農業・茶業
[分類]技術・参考

[背景・ねらい]
  茶産地では窒素施肥量削減による環境負荷軽減への取り組みがなされてきたが、今後、地下水の硝酸性窒素の環境基準に対応しつつ、茶の品質・収量を維持するには、主力品種  「やぶきた」に比べて少肥条件に適応できる品種の選定が急がれる。
  そこで、三重県および他地域で少肥栽培に有望と考えられた品種の中で「みえうえじま」、「さやまかおり」、「さえみどり」、「めいりょく」、「ふうしゅん」について、施肥窒素量40kg/10aの少肥栽培条件で、煎茶およびかぶせ茶としての生産性と品質を明らかにする。

[成果の内容・特徴]
1. 収量は「やぶきた」と比較して、煎茶では「みえうえじま」、「ふうしゅん」、「さやまかおり」、「さえみどり」が高く、かぶせ茶では「ふうしゅん」、「さやまかおり」、「みえうえじま」が高い。両茶種ともに、特に「ふうしゅん」、「みえうえじま」、「さやまかおり」の収量性と窒素吸収効率は高い(表1)。
2. 荒茶成分の全窒素、遊離アミノ酸、テアニン含有率は「やぶきた」と比較して、煎茶では「みえうえじま」、「さえみどり」が高く、かぶせ茶では「みえうえじま」、「さやまかり」、「さえみどり」が高い(表2)。
3. 官能審査値は「やぶきた」と比較して、煎茶では「みえうえじま」、「さえみどり」、「さやまかおり」、「めいりょく」が同等以上であり、かぶせ茶では「みえうえじま」、「めいりょく」が同等以上である(表3)。

[成果の活用面・留意点]
1. 改植・新植時の品種選定の基礎資料となる。
2. 本試験は年間窒素無機化推定量14.7kg/10a(2001年時点)の礫質赤色土壌、樹齢10〜12年生(2006年現在)の茶樹において、2000年秋肥から減肥を開始した。
3. 施肥体系は基肥4回(秋肥2回、春肥2回)+追肥3回(一番茶前、一番茶後、二番茶後)、肥料は基肥にはなたね油粕と有機配合、追肥には化成肥料を用いた。
4. かぶせ茶栽培の被覆は遮光率85%の寒冷紗を用い、被覆期間は一番茶については3葉期から2週間、二番茶については2.5葉期から10日間とした。
5. 三重県の現行窒素施肥基準は煎茶55kg/10a、かぶせ茶65kg/10aである。


[具体的データ]

表1 生育・生葉収量および窒素吸収量(2004〜06平均値)
表2 荒茶成分(2004〜06平均値)
表3 官能審査値(2004〜06平均値)

[その他]
研究課題名:土壌環境健全化等による伊勢茶の品質向上技術の開発
予算区分:県単
研究期間:2004〜2006年度
研究担当者:青久、磯部宏治、富所康広、喜多嶋秀之

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