早生、紫黒糯、水稲新品種候補「信交糯147号」


[要約]
水稲「信交糯147号」は、長野県で成熟期が「カグヤモチ」よりやや遅い早生の紫黒糯で、脱粒性が難、耐冷性が強い良質な系統である。特に高冷地では、あざやかな紫黒色になる。

[キーワード]水稲、紫黒糯、信交糯147号

[担当]長野農事試
[代表連絡先]電話:026-246-9783
[区分]関東東海北陸農業・関東東海・水田作畑作
[分類]技術・普及

[背景・ねらい]
  本県では、特産品として有色素米を利用した加工品の開発が行われており、赤飯、紫餅、おかき、紫麺、笹ずしなどに利用されている。
  平成10年に育成した紫黒糯「しなの深紅」は中生種で、標高900m以上の高冷地では栽培が困難である。そこで、高冷地における小規模生産者から早生で耐冷性の強い高付加価値のある紫黒糯品種が要望されていた。早生で良質の紫黒糯品種を育成・普及することにより、地域振興を図る。

[成果の内容・特徴]
1. 「信交糯147号」は1991年に長野県農事試験場において、「カグヤモチ」を母に、「東北糯149号」を父とする交配の雑種後代から育成された紫黒糯系統である。
2. 「信交糯147号」は「カグヤモチ」と比較して次の特徴がある(表1)。
  ・出穂期は1〜2日、成熟期は2〜5日遅い、“早生”である。
 

・稈長はやや長いが、耐倒伏性は“強”である。

 

・収量性は15〜30%程度低いが、「しなの深紅」よりは多収である。

  ・いもち病真性抵抗性遺伝子は Piaと推定され、圃場抵抗性は葉いもち、穂いもちともに“強”である。
 

・脱粒性が“難”、耐冷性が“強”である。

  ・生育初期から登熟中期まで、葉縁、葉鞘は紫色を呈する。また、葉舌、ふ先などは紫色に着色し、一般品種とは容易に識別できる。

[成果の活用面・留意点]
1. 普及地帯は標高900m以上の地帯。
2. 一般米に混入すると規格外となるので、混種防止のため農業改良普及センターの指導の下で固定圃場において栽培して落穂、落籾等による混種を防止する。
3. 耐冷性は強いが、冷温襲来時には深水管理等の冷害対策を実施する。
4. 圃場でのいもち病の激発は認められていないが、多肥栽培を避け、適期防除に努める。
5. 玄米は果皮がアントシアニン系の濃い紫色(黒紫色)を呈する。胚乳部は白いため、完全に搗精すると一般の糯品種と同様の白色となる。
6. 果皮の色素を利用して赤飯にする場合、単品の場合は92%程度に搗精してわずかに紫色の果皮を残して蒸すと、全体が赤紫色を呈する。また、果皮を傷つける程度に搗精し、一般糯米と混米しても赤紫色の赤飯となる。
7. 赤飯、紫餅の他に果皮の色素を利用して、おかき、紫麺、笹ずし、染色原料等、地域特産物に利用できる。


[具体的データ]

表1 特性一覧

[その他]
研究課題名:水稲の耐冷・良食味・酒造好適米品種の育成
予算区分:県単
研究期間:1991〜2006年度
研究担当者:高松光生、久保田基成、新井利直、近藤武晴、後藤和美、前島秀和、手塚光明、中澤伸夫
発表論文等:2007年3月品種登録申請予定

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