スイカトンネル栽培における被覆肥料を用いた窒素の大幅な減肥技術


[要約]
スイカトンネル栽培において、被覆肥料(リニア型70日タイプ)を全量基肥として用いることにより、施肥窒素利用率が向上し、施肥窒素量を標準施肥量の50%低減しても収量、品質が確保できる。また、跡地の土壌残存窒素量を減らせる。

[キーワード]スイカトンネル栽培、窒素減肥、窒素全量基肥、被覆肥料、土壌残存窒素量

[担当]千葉農総研・生産環境部・環境機能研究室
[代表連絡先]電話:043-291-9995
[区分]関東東海北陸農業・関東東海・土壌肥料
[分類]技術・普及

[背景・ねらい]
  生産量全国第1位(2005年度)である千葉県のスイカ栽培では、窒素吸収量を大幅に上回る窒素肥料を施用していることや通路への追肥などにより、土壌中に硝酸態窒素が多く残存するため、地下水の硝酸汚染が懸念される。そこで、スイカの収量及び品質を確保しつつ、環境に負荷を与えないための減肥技術を開発する。

[成果の内容・特徴]
1. 被覆肥料の全量基肥、全面全層施肥によるスイカトンネル栽培において、標準施肥窒 素量25kg/10a(基肥と追肥合計量)に対して、減肥割合を30%(施肥窒素量17.5kg/10a)、50 %(同12.5kg/10a)並びに70%(同7.5kg/10a)とした。
2. 総収量及び上物収量は、減肥区で標準施肥区と有意差はないものの、70%減肥区で はやや劣る傾向がみられる。減肥区の糖度及び食味は標準施肥区と同等である(表1)。
3. 施肥窒素利用率は、被覆肥料の減肥割合が大きいほど向上する(表2)。
4. 跡地ベッド部の土壌中硝酸態窒素量は、標準施肥区に比べて、50%及び70%減肥区 では60%程度減少するが、30%減肥区では同程度残存する(図1)。
5. 跡地通路部の土壌中硝酸態窒素量は、標準施肥区が30〜60cm層で6.1〜9.6mg/100g と多いのに対して、各減肥区では2mg/100g以下と少ない(図2)。

[成果の活用面・留意点]
1. 供試した被覆肥料(被覆燐硝安加里)の成分含有量は、N-P2O5-K2O=14-12-14である。標準施肥区の基肥は、被覆肥料(同上)と有機入り配合肥料(N-P2O5-K2O=4-9-2)を窒素比率1:1で混合した。また、追肥は通路に化成肥料を表層施肥した。
2. 本圃場には牛ふんオガクズ堆肥(現物全窒素1%)を2t/10a施用した。また、リン酸及び加里は、両成分とも施肥基準量の30kg/10aとなるように別途単肥で施用した。
3. 肥料費は、標準施肥(有機入り配合肥料使用)では36,000円/10a、50%減肥(被覆肥料使用)では21,500円/10a程度である。
4. 試験は、千葉農総研内の圃場で行った。土壌は表層腐植質黒ボク土、施肥前の土壌中硝酸態窒素量は0〜15cm層では0〜0.3mg/100g、15〜30cm層では0.1〜0.5mg/100gである。


[具体的データ]

表1 スイカの収量、平均1果重及び品質
表2 スイカの窒素吸収量及び施肥窒素利用率
図1 スイカ跡地ベッド部の土壌中硝酸態窒素量 図2 スイカ跡地通路部の土壌中硝酸態窒素量

[その他]
研究課題名:トンネル栽培スイカの減肥技術の開発
予算区分:県単
研究期間:2004〜2005年度
研究担当者:森孝夫、川上敬志、松丸恒夫

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