おがくず牛ふん堆肥を利用したニラにおける硝酸態窒素溶脱軽減栽培


[要約]
窒素無機化が遅い堆肥は、収量を低下させることなく硝酸態窒素溶脱を軽減させることができる。窒素無機化が早い堆肥は、土壌中の残存窒素量に応じて基肥窒素を減肥すると、目標収量(3t/10a)を確保しながら硝酸態窒素溶脱を低下させることができる。

[キーワード]ニラ、おがくず牛ふん堆肥、窒素無機化率、硝酸態窒素、基肥減肥

[担当]栃木農試・環境技術部・土壌作物栄養研究室
[代表連絡先]電話:028-665-7072
[区分]関東東海北陸農業・関東東海・土壌肥料
[分類]技術・参考

[背景・ねらい]
  堆肥等の活用により環境保全型農業を持続させるためには、安定した収量の確保と同時に土壌や地下水の環境を考慮した堆肥施用法の確立が必要である。そこで、本県の主要農産物のニラにおいて、施肥基準に準じた牛ふん堆肥3t/10a施用下における硝酸態窒素溶脱軽減栽培について検討する。

[成果の内容・特徴]
1. 堆肥Aと比較して無機態窒素含量(アンモニア態窒素+硝酸態窒素)が少ない堆肥Bは、初期の窒素無機化が堆肥Aよりも遅い(表1図1)。
2. 慣行区において、堆肥Bと堆肥Aの総収量は同程度である(表2)。また、窒素の無機化が遅い堆肥B施用では、株養成期間中(8月〜12月)の浸透水中の硝酸態窒素濃度が低下する(図2)。
3. 窒素無機化が早い堆肥A施用において、土壌の残存窒素量に応じて基肥窒素を減肥すると、株養成期間中の浸透水中の硝酸態窒素濃度を化学肥料区と同程度まで低下する(図2)。また、浸透水中の硝酸態窒素濃度が10mg/Lを上回る期間は減少し、栽培期間中の平均濃度は、8.7mg/Lであった。
4. 堆肥A施用において、土壌の残存窒素を考慮して基肥窒素を減肥しても目標収量(3t/10a)を確保できる。(表2)。

[成果の活用面・留意点]
1. 供試土壌は、表層多腐植質黒ボク土である。
2. 基肥窒素減肥量は、「基肥窒素施用量−土壌の残存窒素量」(作土15cm、仮比重0.65)で計算した。「土壌の残存窒素量」は、「栽培前の土壌中可給態窒素量+(土壌中硝酸態窒素量−5kg)」とした。なお、(土壌中硝酸態窒素量−5kg)は、本県の施肥基準に準じた。
3. 浸透水中の硝酸態窒素濃度の推移は、本試験で使用したおがくず牛ふん堆肥を単年施用した時の数値である。


[具体的データ]

表1 供試堆肥の化学性
図1 堆肥中窒素の無機化率の推移 表2 ニラ収量の推移
図2 浸透水中の硝酸態窒素濃度の推移とニラ栽培概要

[その他]
研究課題名:有機物利用による施肥法の確立
予算区分:県単
研究期間:2003〜2005年度
研究担当者:間由美、小林靖夫、鈴木聡

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