コーンコブを主体とするきのこ廃培地堆肥の肥効特性


[要約]
コーンコブ廃培地堆肥の畑条件30℃、2か月での窒素無機化量は、現物1tあたり1〜2kgである。黒ボク土での廃培地堆肥の窒素分解率は、1年で30%、2年で50%、4年で70%程度である。レタスでは、廃培地堆肥による化学肥料代替が可能である。

[キーワード]コーンコブ、廃培地、堆肥、窒素無機化、窒素分解率、レタス

[担当]長野野花試・病害虫土壌肥料部・野菜部、長野中信農試・畑作栽培部
[代表連絡先]電話:026-278-6848
[区分]関東東海北陸農業・関東東海・土壌肥料
[分類]技術・参考

[背景・ねらい]
  近年のきのこ栽培では、エノキタケを中心に、コーンコブ(トウモロコシ穂軸)を培地原料の3〜5割含み、米ぬか(2〜4割)等副資材を添加した培地が一般的に使われている。この廃培地の農地利用が求められており、とくに化学肥料代替利用が期待されているが、窒素無機化及び分解についての知見は少なく、適正な利用法が確立されていない。そこで、コーンコブを主体とする菌茸廃培地堆肥について窒素無機化及び分解特性を調べ、長野県の主要野菜であるレタスを対象として化学肥料代替が可能か検討した。

[成果の内容・特徴]
1. 掻き出し後間もないコーンコブ廃培地(廃培地と略)の炭素率は20〜27程度で、堆肥化により12〜17まで低下する。現物中に全窒素は、廃培地で約0.8%、堆肥で約1.4%含まれ、全リン酸は、廃培地で約1.2%、堆肥で約2.3%含まれる(表1)。
2. 畑条件での堆肥現物1tあたりの窒素無機化量は、培養1か月では0.4〜1kg程度、2か月では1〜2kg程度である。一方、廃培地では、培養3週間から1か月までは窒素の有機化が優先し、その後の窒素無機化量は堆肥より少ない(図1)。
3. 黒ボク土畑での堆肥の窒素分解は、施用後4年間にわたり緩やかに進行する。9月末に施用した堆肥の窒素分解率は、10〜3月の半年間で約20%、1年で約30%、2年で約50%であり、4〜6年では約70%で推移する(図2)。
4. レタスでは、堆肥を10aあたり1〜2t施用することで、化学肥料代替が可能である(図3)。
5. 化学肥料代替区の跡地土壌の可給態リン酸は、化成肥料100%(無堆肥)区に比べて高い(図3)。

[成果の活用面・留意点]
1. 廃培地は自然発酵しやすく、発酵熱で乾燥しやすいため、堆肥化中の水分補充に注意する。乾燥状態で分解が停滞したものは、長期間経過していても未熟であるため、作付直前での利用は避ける。
2. 廃培地堆肥の成分は、米ぬか等副資材の種類や配合比により変動する。とくに、米ぬかの割合が高いものは、リン酸を多く含む。
3. 土壌中可給態リン酸が土壌診断基準値以上ある圃場で廃培地堆肥を施用する場合は、リン酸施肥を控える。
4. 廃培地堆肥の窒素肥効率は、連用3年目までは20%程度とし、4年目以降は土壌診断値や作物生育状況を勘案して、70%以上まで段階的に引き上げる。リン酸とカリの肥効率はいずれも80%とするが、これらの数値は土壌診断値に基づき適宜補正する。
5. 排出後間もない廃培地は、施用後約1か月間は窒素の有機化量が多く、一時的な窒素飢餓や初期生育の遅延を引き起こすおそれがあるので利用しない。


[具体的データ]

表1 収集したコーンコブ廃培地とその堆肥の現物成分
図1 コーンコブ廃培地と堆肥の窒素無機化 図2 コーンコブ廃培地堆肥の窒素分解
図3 堆肥の化学肥料代替とレタス収量及び跡地土壌可給態リン酸

[その他]
研究課題名:コーンコブを主体としたきのこ廃培地の野菜畑への施用技術の確立
予算区分:県単
研究期間:2004〜2006年度
研究担当者:山田和義、上原敬義、吉田清志、小松和彦、斎藤龍司(長野南信農試)

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