砂地露地畑におけるニンジン、カボチャの灌水同時施肥栽培による窒素溶脱量の大幅な削減


[要約]
砂地露地畑におけるニンジン、カボチャの灌水同時施肥栽培において、窒素吸収量に基づいた施肥をすることにより施肥効率が高まり、窒素溶脱量を慣行栽培より削減することができる。

[キーワード]砂地、露地野菜、ニンジン、カボチャ、灌水同時施肥、窒素溶脱

[担当]静岡農試・海岸砂地分場
[代表連絡先]電話:0537-86-2218
[区分]関東東海北陸農業・関東東海・土壌肥料、共通基盤・土壌肥料
[分類]技術・参考

[背景・ねらい]
  砂地露地畑は、透水性が良好なため降雨や灌水に伴い施肥した窒素が地下水中に溶脱しやすく、環境に大きな負荷を与えることが想定されることから、その低減が求められている。一方、野菜や花きの施設園芸で普及している灌水同時施肥は、少量多頻度で施肥を行い、施肥量の削減も可能な栽培方法であるので、砂地露地畑における環境負荷軽減にも有効であると考えられる。そこで、灌水同時施肥栽培により露地野菜を栽培し、窒素溶脱量及び窒素溶脱パターンを解明し、溶脱量の削減効果を明らかにした。

[成果の内容・特徴]
1. ニンジン、カボチャの灌水同時施肥栽培では、窒素吸収量に基づいて施肥する。また生育時期に応じて液肥の窒素濃度、施用間隔を変更する。液肥の窒素濃度は、窒素吸収の少ない生育初期には低くし、窒素吸収の多くなる生育中期〜後期には高くする(表1)。
2. 灌水同時施肥区の窒素吸収量は、慣行を上回る。また窒素溶脱量は慣行に対し大幅に削減され、窒素施肥量に対する溶脱率は慣行区の63〜74%に対し19〜21%となる(表3)。
3. 灌水同時施肥区と慣行区の窒素溶脱量の差は、生育初期では比較的小さいが、生育中期以降大きくなる(図1)。
4. 窒素吸収量に基づいた灌水同時施肥により、慣行栽培と同等以上の収量を得ることができる(表3)。

[成果の活用面・留意点]
1. 本試験は、分場内の砂丘未熟土露地圃場で実施しており、堆肥は施用していない。
2. ニンジンの灌水同時施肥区は、トンネル内に散水チューブを2本設置し、発芽が揃うまでは1日1回水のみ灌水している。液肥施用を開始するのは発芽が揃った後で、市販の灌水同時施肥栽培用肥料(15-20-15)を水圧駆動式液肥混入機で施用している。慣行区は、基肥に有機化成(8-10-8)を全面施用し、追肥①は苦土有機入化成(8-8-8)、追肥②は高度化成A(16-4-16)を各々条施肥している。
3. カボチャの灌水同時施肥区は、ドリッパー間隔が20cmの点滴チューブを株元に1本設置し、市販の灌水同時施肥栽培用肥料(15-15-15)を水圧駆動式液肥混入機で施用している。慣行区は、基肥に緩効性化成肥料(10-10-10)を全面施用し、追肥に高度化成B(16-10-14)と高度化成C(16-16-16)を同量ずつ条施肥している。


[具体的データ]

表1 ニンジンの時期別窒素施肥量、液肥窒素濃度及び液肥施用間隔
表2 カボチャの時期別窒素施肥量、液肥窒素濃度及び液肥施用間隔
表3 灌水同時施肥と慣行栽培の収量、窒素吸収量、窒素溶脱量及び窒素溶脱率
図1 積算窒素溶脱量の推移 (左:ニンジン、右:カボチャ)

[その他]
研究課題名:砂地における面源負荷の実態把握と効率的施肥技術の確立
予算区分:国補(指定試験)
研究期間:2004〜2005年度
研究担当者:杉浦秀治、新良力也、高橋智紀、福島  務

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