鶏ふん堆肥の尿酸態窒素測定による可給態窒素の推定


[要約]
近赤外分光法により、鶏ふん堆肥の尿酸態窒素を標準誤差0.43%で測定できる。尿酸態窒素と可給態窒素との相関は極めて高く、近赤外分光法を用いて尿酸態窒素を測定すれば、簡易・迅速に鶏ふん堆肥の可給態窒素を推定できる。

[キーワード]近赤外分光法、鶏ふん堆肥、尿酸態窒素、可給態窒素

[担当]三重科技セ・農業研究部・循環機能開発研究課
[代表連絡先]電話:0598-42-6361
[区分]関東東海北陸農業・関東東海・土壌肥料
[分類]技術・参考

[背景・ねらい]
  鶏ふん堆肥は窒素の肥効を期待して施用されることが多いが、その可給態窒素は製品によって大きなばらつきがある。そのため、無機化しやすい尿酸態窒素を酵素法により測定し、鶏ふん堆肥の可給態窒素を精度よく推定する方法が薦められている。しかし、酵素法は試薬や器具を必要とするばかりか、簡便性・即応性に欠ける。そこで、対象物の成分を簡易、迅速に測定できる近赤外分光法により尿酸態窒素を測定し、鶏ふん堆肥の可給態窒素を簡便に推定する方法を確立する。

[成果の内容・特徴]
1. 乾燥・粉砕した鶏ふん堆肥の反射スペクトルを近赤外分光計により測定し、二次微分スペクトルデータと、従来法による測定値を用いて重回帰分析を行うことにより検量線を作成すれば、鶏ふん堆肥の尿酸態窒素を標準誤差0.43%で測定可能である(図1)。
2. 酵素法により測定した尿酸態窒素を用いると極めて高い精度で鶏ふん堆肥の可給態窒素を推定できる(図2)。
3. 以上より、近赤外分光法により鶏ふん堆肥の尿酸態窒素量を測定し、その値を図2に示した回帰式により換算すれば、可給態窒素を簡便に推定できる(図3)。1点あたりの測定時間は数分であり、従来の酵素法(2時間)に比べ短縮される。また、試薬が不要であることから廃液の問題もない。

[成果の活用面・留意点]
1. 鶏ふん堆肥の製造や施用場面において、可給態窒素を簡便に推定することができるため、安定した窒素肥効を有する堆肥の製造や、窒素肥効を考慮した施肥設計に活用することができる。
2. 本成果は、鶏ふん堆肥の窒素肥効を評価するために使用するもので、尿酸態窒素が残存している堆肥に適応可能である。
3. 近赤外スペクトルは、NIRSystem社製MODEL650と標準カップセルを用いて測定した。


[具体的データ]

図1 近赤外分光法による鶏ふん堆肥の尿酸態窒素の測定精度 図2 鶏ふん堆肥の尿酸態窒素による可給態窒素の予測
図3 近赤外分光法による可給態窒素の推定精度

[その他]
研究課題名:食の安全・持続的農業総合対策事業
予算区分:県単
研究期間:2005年度
研究担当者:村上圭一、藤原孝之
発表論文等:FUJIWARA et al(2007)SSPN 53:102-107

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