静岡県における施設トマトのハモグリバエ類のエンドウ由来土着寄生蜂による防除


[要約]
トマトとエンドウのハモグリバエ類の土着寄生蜂は共通する種が多く、エンドウを刈り取り施設内に投入してトマトのハモグリバエ類を防除できる。土着寄生蜂に影響の少ない農薬と組み合わせることにより、トマトの病害虫防除の体系に組み込むことができる。

[キーワード]トマト、エンドウ、土着天敵、寄生蜂、ハモグリバエ類、農薬

[担当]静岡農試・土着天敵プロジェクトスタッフ
[代表連絡先]電話:0538-36-1557
[区分]関東東海北陸農業・関東東海・病害虫(虫害)
[分類]技術・普及

[背景・ねらい]
  トマトのハモグリバエ類は薬剤抵抗性が発達し難防除害虫となっている。一方、エンドウに寄生するナモグリバエにはトマトのハモグリバエと共通する土着寄生蜂が高率に寄生することが分かっており、近年、これらを春期に施設栽培トマト等のハモグリバエ類防除に活用する取り組みが行われている。そこで、春以外の時期にも土着寄生蜂を活用できるように、静岡県内のトマトとエンドウのハモグリバエ類の土着寄生蜂の種構成を明らかにするとともに、エンドウの投入がトマトのハモグリバエ類の密度に及ぼす影響とその防除体系への組み込みについて検討した。

[成果の内容・特徴]
1. トマトにはマメハモグリバエ、トマトハモグリバエおよびナスハモグリバエが寄生し、ナモグリバエの発生は認められない。一方、エンドウには夏期を除き、主にナモグリバエが寄生している(データ略)。
2. 静岡県におけるエンドウのハモグリバエ類の寄生蜂種は、トマトの寄生蜂種と共通する種が多い(表1)。
3. 8、9月を除き、無農薬栽培したエンドウで寄生蜂を確保できる。特に、春期は大量の寄生蜂を容易に確保できる(表2)。
4. 刈り取ったエンドウをトマト定植3週間後頃から3〜6回、10aあたり5〜6ヶ所に分散して施設内に設置することで、ハモグリバエ類を防除できる(表2図1)。秋作でも本法により、ハモグリバエ類を防除できる(データ略)。
5. 育苗期にエマメクチン安息香酸塩乳剤やイミダクロプリド水和剤などを、定植時にニテンピラム粒剤などの非選択性殺虫剤を使用して本ぽに害虫を持ち込まないようにする。トマト定植後は、寄生蜂に影響が少ない農薬や天敵(表3)を組み合わせて他病害虫を体系的に防除する。

[成果の活用面・留意点]
1. 害虫の侵入を防止するため施設の開口部には0.4mm目合いの防虫網を設置する。
2. トマトハモグリバエ、チョウ目害虫などが寄生する6〜10月にエンドウを施設内に投入する際には、これらの混入を避けるため、エンドウをバケツ等の適当な容器に入れて 0.4mm目合いの網で覆う。


[具体的データ]

表1 エンドウ及びトマトのハモグリバエ寄生蜂の種類
表2 エンドウの利用時期とその播種時期および投入量の目安
図1 エンドウ投入による施設トマトのハモグリバエ防除(春作、エンドウ投入:0.5mエンドウ茎1本/回/トマト21株) 表3 土着寄生蜂利用体系に組込み可能な農薬1)

[その他]
研究課題名:土着天敵を活用した減農薬防除技術の開発
予算区分:県単、国庫委託(生物機能プロ)
研究期間:2004〜2006年度
研究担当者:土井誠、多々良明夫、片山晴喜、金子修治、杉山恵太郎、田上陽介、西東力

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