ホウレンソウ水耕栽培における銀メッキ繊維フィルターによる萎凋病防除


[要約]
水耕栽培ホウレンソウに発生する萎凋病(病原菌:Fusarium oxysporum f.sp.spinaciae)は銀メッキ繊維を使ったフィルターを給水装置に取付けることによって防除できる。

[キーワード]ホウレンソウ、水耕栽培、萎凋病、銀メッキ繊維、フィルター

[担当]静岡農試・病害虫部
[代表連絡先]電話:0538-36-1557
[区分]関東東海北陸農業・関東東海・病害虫(病害)
[分類]技術・参考

[背景・ねらい]
  ホウレンソウ水耕栽培では萎凋病などの立枯性病害の発生が問題となっており、その防除対策が求められている。一方で近年、銀を利用した病害防除法が開発されつつあることから、ホウレンソウ水耕栽培における銀資材、銀メッキ繊維フィルター(以下銀フィルター)の防除効果を検証する。

[成果の内容・特徴]
1. 銀フィルターは養液槽から栽培槽へつながる給液パイプ上にプレフィルターとともに設置する(図1)。
2. ホウレンソウ萎凋病に対して、無処理区の発病度が89.5という多発条件下でも、銀フィルターは防除価68.1と高い防除効果がある(表1図2)。この防除価は市販金属銀剤(オクトクロス)よりも高い。
3. 銀は使用法によっては銀イオンによる薬害を生ずる場合があるが、本銀フィルターによる薬害は認められない。

[成果の活用面・留意点]
1. 銀フィルターは銀を担持したポリエステル繊維で調整した撚糸により作製されており、繊維を通過、接触する時点で糸状菌・細菌に対して高い殺菌活性を示す。このため銀の溶出はほとんどない。
2. 銀フィルターは病害の予防を主体とするため、栽培初期からの設置が必要である。
3. 水耕栽培では銀フィルターの使用とともに、栽培ベンチ等の消毒も併せて実施する必要がある。
4. 銀フィルターは既存の給液装置上に簡易に取り付けができ、理論値として2,700tの養液の処理が可能である。
5. 装置は銀フィルター、市販糸状フィルター(プレフィルター用)とこれを納める市販フィルターハウジングとで1セットとなり、このうち銀フィルターは約7万円となる。


[具体的データ]

図1 銀フィルター設置ホウレンソウ水耕栽培装置
表1 ホウレンソウ萎凋病に対する銀フィルター防除効果(接種22日後)
図2 ホウレンソウ萎凋病に対する各資材の防除効果(発病度の経時的推移)

[その他]
研究課題名:養液栽培で発生する病害の原因究明
予算区分:県単
研究期間:2004〜2006年度
研究担当者:鈴木幹彦、外側正之

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