平地農村地域のカラス類は繁殖個体と同数程度の巣立ちヒナを生産


[要約]
平地農村地域において、ハシボソガラスとハシブトガラスの繁殖に成功したつがいの割合はそれぞれ76%と87%、繁殖に成功した場合の平均巣立ちヒナ数はそれぞれ2.37羽と2.62羽であり、1年間に繁殖個体数と同数程度の巣立ちヒナが生産されている。

[キーワード]ハシボソガラス、ハシブトガラス、繁殖、巣立ちヒナ数、平地農村地域、個体群管理

[担当]中央農研・鳥獣害研究サブチーム
[代表連絡先]電話:029-838-8925
[区分]共通基盤・病害虫(虫害)、関東東海北陸農業・関東東海・病害虫(鳥獣害)
[分類]研究・参考

[背景・ねらい]
  鳥類による農作物被害ではカラス類によるものが最大である。カラス類による被害は加害作物や時期が多岐にわたるため、個別の防除対策に加えて長期的には個体数を抑制する個体群管理が望まれる。そのために必要となる個体群動態に関する基礎情報として、農村地域におけるハシボソガラスとハシブトガラスの繁殖成功と巣立ちヒナ数を明らかにする。

[成果の内容・特徴]
1. 平地農村地域のハシボソガラスとハシブトガラスでは、繁殖成否が不明であったつがいを除外して算出すると、1羽以上のヒナを巣立たせて繁殖に成功したつがいの割合はそれぞれ76%と87%である(表1)。
2. 繁殖に成功した場合の平均巣立ちヒナ数はハシボソガラスで2.37±0.97羽(平均±標準偏差, n=92)、ハシブトガラスで2.62±0.99羽(n=50)である(表1図1)。
3. 繁殖に成功したつがいの割合と平均巣立ちヒナ数を総合すると、両種とも1年間に繁殖個体数と同数程度の巣立ちヒナを生産している。
4. 巣立ち時期は、ハシボソガラスは5月前半から後半、ハシブトガラスは5月後半から6月前半がほとんどであり(図2)、繁殖成功後に同一シーズン内の再繁殖はしない(データ略)。

[成果の活用面・留意点]
1. 本成果は、これまでにない多数のつがいの調査に基づいて繁殖成績を明らかにしたものであり、農村地域における駆除の効果算定や、多大な被害を与える若鳥の群れの発生予測を行うための基礎資料として重要である。
2. 本成果は、茨城県南部の平地農村地域で得られたものであり、気候や土地利用が異なる地域では実態が異なる可能性がある。


[具体的データ]

表1 ハシボソガラスとハシブトガラスの繁殖成否と平均巣立ちヒナ数
図1 ハシボソガラスとハシブトガラスの巣立ちヒナ数
図2 ハシボソガラスとハシブトガラスの巣立ち時期

[その他]
研究課題名:野生鳥獣の行動等の解明による鳥獣害回避技術の開発
課題ID:421-c
予算区分:基盤研究費
研究期間:2006年度
研究担当者:吉田保志子、百瀬浩、山口恭弘
発表論文等:吉田ら(2006)日本鳥学会誌 55(2):56-66

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