出穂期葉色および気温による「コシヒカリ」の基白、背白粒発生予測モデル


[要約]
基白、背白粒は出穂後20日間の気温が高いほど発生が多く、同じ気温レベルでは出穂期の葉色値が高いほど発生が少なくなる。これらの関係から、基白、背白粒の発生程度が予測できる。

[キーワード]高温登熟、基白粒、背白粒、葉色、コシヒカリ、予測モデル

[担当]富山農技セ・農業試験場・機械営農課
[代表連絡先]電話:076-429-5280
[区分]関東東海北陸農業・北陸・水田作畑作
[分類]技術・普及

[背景・ねらい]
  富山県においては、近年、登熟期間の異常高温の影響によりコシヒカリで基白、背白粒等の白未熟粒が多発している。白未熟粒の発生には登熟期間の栄養凋落など稲体側の条件も深く関わっており、近年の食味重視による窒素施用量の減少がその発生を助長していると考えられる。そのような中、幼穂形成期から出穂期以降の葉色を適正に誘導することで、基白、背白粒の発生を軽減することができる。
そこで、葉色制御を行う上での基盤として、葉色と基白、背白粒発生との関係を解明するとともに、気象条件を加味した発生予測モデルを作出する。

[成果の内容・特徴]
1. 出穂後20日間の気温が高いほど、基白、背白粒の発生は多くなる。また、各気温レベルでは出穂期の葉色値が高いほど、基白、背白粒の発生は少なくなる(図1)。なお、解析したデータの全籾数レベルは18,900〜37,000粒/m2で、籾数レベルが変動しても出穂期の葉色値により、基白、背白粒の発生程度を十分説明できる。
2. これらの関係から次式で基白、背白粒発生比率(Y )を予測することができる(図2)。
   Y =(−1.223×T +31.45)×(Lc −44.15)    ・・・・・ (式1)
   T :出穂後20日間の平均気温 (25.8℃<T <28.5℃)
   Lc :出穂期の止葉のSPAD値 (28<Lc <38)

[成果の活用面・留意点]
1. 北陸地域の砂質浅耕土地帯のコシヒカリに活用できる。
2. 出穂後の平均気温が高温となりやすい地帯や作期条件での栽培指導、技術指針の策定の際に活用できる。
3. 基白、背白粒発生比率はごく軽微なものもカウントしたが、実際の検査では3分の1程度の値となる。


[具体的データ]

図1 登熟期の気温が異なる場合の出穂期の葉色と基白背白粒発生比率の関係
図2 現地圃場における未知データによる基白背白粒発生推定モデルの検証

[その他]
研究課題名:気象・作物的要因解析による被害粒発生の診断予測技術の開発
予算区分:委託プロ(気候温暖化)
研究期間:2003〜2006年度
研究担当者:高橋  渉、杉森史郎、守田和弘、野村幹雄(高岡農普指セ)

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