出芽期を多湿条件で経過した大豆の生育とちりめんじわ粒発生の特徴


[要約]
大豆の出芽期に湿害を受けると、開花期頃までの主根長は短くなり、根乾物重の増加が停滞するとともに子実肥大期頃までの地上部窒素含量が少なくなる。その結果、登熟後半の葉色の低下および落葉時期が早くなり、ちりめんじわ粒の発生が増加する。

[キーワード]出芽期、湿害、根、窒素含量、葉色値、落葉期、ちりめんじわ粒、大豆

[担当]富山農技セ・農業試験場・機械営農課
[代表連絡先]電話:076-429-5280
[区分]関東東海北陸農業・北陸・水田作畑作
[分類]技術・参考

[背景・ねらい]
  富山県産大豆の主力品種であるエンレイでは、近年、ちりめんじわ粒が多発して上位等級比率が低下している。
  一方、従来から出芽期の湿害は生育や収量に影響を及ぼすことは明らかになっているが、ちりめんじわ粒の発生については未解明な点が多い。
  そこで、出芽期の湿害が根の生育や地上部窒素含量、さらには落葉時期、ちりめんじわ粒発生に及ぼす影響について明らかにする。

[成果の内容・特徴]
1. 出芽期に湿害を受けると、開花期頃までの主根の伸長および根乾物重の増加が停滞するとともに(図1)、子実肥大期頃までの地上部窒素含量は低く推移する(図2)。この影響により、登熟後半の葉色値が早く低下するとともに、落葉時期が早まる(図3図4)。
2. この結果、収量は低くなりちりめんじわ粒の発生率が高くなる(図4)。
3. 以上のことから、大豆は出芽期に湿害を受けると、生育期の窒素栄養状態が悪化し、これにより登熟後半の葉色が早く低下するとともに落葉時期が早くなり、ちりめんじわ粒の発生が増加する。

[成果の活用面・留意点]
1. 北陸地域の砂質浅耕土地帯における水田転換畑のエンレイに活用できる。
2. ちりめんじわ粒の発生をさらに低減するためには、排水対策と併せて地力増強や適期収穫などを組み合わせて取り組む必要がある。


[具体的データ]

図1 出芽期の土壌高水分処理が開花期までの主根長および根乾物重に及ぼす影響(2006年) 図2 出芽期の土壌高水分処理が子実肥大期までの地上部窒素含量に及ぼす影響(2006年)
図3 出芽期の土壌高水分処理が登熟後半の葉色値に及ぼす影響(2006年) 図4 出芽期の土壌高水分処理が黄葉始期の葉色値およびちりめんじわ粒発生、収量に及ぼす影響(2006年)

[その他]
研究課題名:北陸地域に多発する大豆しわ粒の発生防止技術の開発
予算区分:高度化事業
研究期間:2004〜2006年度
研究担当者:荒井清完、細川吉裕、寺西敏子、金田宏、吉田稔、鍋島弘明

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