チューリップから分離されるネクロウイルスの種類と病原力


[要約]
チューリップからは、Tobacco necrosis virus D (TNV-D)、Olive mild mosaic virus (OMMV)、Olive latent virus 1 (OLV-1)および所属未確定のネクロウイルス1種(TulNVと仮称)の計4種のネクロウイルスが分離される。病原力はOMMVが最も強い。

[キーワード]チューリップ、えそ病、ネクロウイルス、病原性

[担当]富山農セ・野菜花き試験場・花き課
[代表連絡先]電話:0763-32-2259
[区分]関東東海北陸農業・北陸・生産環境、共通基盤・病害虫(病害)
[分類]研究・参考

[背景・ねらい]
  チューリップえそ病の病原はタバコネクロシスウイルスTobacco necrosis virus (TNV)とされてきたが、その分類は十分に整理されていない。そこで、チューリップから分離されるネクロウイルスの外被タンパク質遺伝子を解析して、その所属を明らかにするとともに、病原力を比較する。

[成果の内容・特徴]
1. チューリップから分離されるネクロウイルスの外被タンパク質(CP)遺伝子領域は、下流プライマーにTN-CP3AD(5’-AGCCTGTTTCCCAGGATCCG-3’) または R-OL (5’-AACCTGTCTACCAGGATCCG-3’)を、上流プライマーにF-necro-com (5’-AGAYWCAAYACATTWCIATC-3’)を用いたRT-PCR法により、その全長を含む約950bpの断片を増幅することができる。
2. 分離されたネクロウイルスはCP遺伝子領域のアミノ酸配列からTobacco necrosis virus D (TNV-D)、Olive mild mosaic virus (OMMV)、Olive latent virus 1 (OLV-1)および所属未確定のネクロウイルス1種(Tulip necrosis virus:TulNVと仮称)の4種に分けられる(図1)。
3. TulNVは最も近縁なTNV-Aと51%の相同性しかなく,明らかな独立種である(データ未掲載)。
4. 2006年に富山県の栽培圃場で分離された8分離株はすべてOMMVである(図1)。
5. 4種ネクロウイルスのうち、OMMVが最も激しいえそ症状を引き起こす(図2)。

[成果の活用面・留意点]
1. チューリップに発生するネクロウイルスの種類が整理され、的確な診断が可能となる。
2. えそ症状のチューリップからはOMMVの分離頻度が高く、本ウイルスは最も激しい病徴を示すことから、今後の発生動向に注意が必要である。
3. OMMVとTNV-Dは血清学的に近縁である。
4. 各ネクロウイルスの病原力は品種:Leo VisserとLucky Strikeを用いて比較したものであり、その他の品種では反応が異なる可能性がある。


[具体的データ]

図1 外被タンパク質領域のアミノ酸配列に基づいて作成した系統樹(NJ法)
図2 各ネクロウイルスのチューリップに対する病原力

[その他]
研究課題名:難防除土壌伝染性ウイルスの耕種的・生物的制御技術の開発
予算区分:指定試験
研究期間:2006年度
研究担当者: 守川俊幸、多賀由美子(高岡農普)、向井環、堀井香織、兼松誠司(東北農研)、棚橋恵(新潟園研)、大木健広(中央農研)、津田新哉(中央農研)

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