埼玉県におけるキュウリ栽培に伴う二酸化炭素排出量の作型別比較


[要約]
キュウリ栽培からのライフサイクルでの二酸化炭素排出量を作型別に比較すると、加温作型での二酸化炭素排出量は面積当たり最大19倍となった。園芸用ヒートポンプの併用は、二酸化炭素排出量を削減することができる。

[キーワード]ライフサイクルアセスメント(LCA)、キュウリ、作型

[担当]埼玉農総研・食品開発・流通担当
[代表連絡先]電話:048-536-6034
[区分]関東東海北陸農業・経営
[分類]技術及び行政・参考

[背景・ねらい]
カーボンフットプリントの試行が始まり、一部の農産物で表示が試みられている。果菜類では、露地や促成・抑制など多くの作型があり、二酸化炭素排出量への影響が考えられるが、十分な知見がない。そこで、キュウリを例にとり、作型間での二酸化炭素排出量をライフサイクルアセスメント(LCA)によって比較し、温室効果ガス排出量の少ない農業生産方式組み立ての基礎資料とする。

[成果の内容・特徴]
1. 埼玉県内のキュウリ栽培事例(表1)をもとに、促成作型、半促成作型(加温・無加温)、露地作型、抑制作型(加温・無加温)、越冬作型を比較した結果である。評価対象は、二酸化炭素とし、評価範囲は栽培から選別・荷造り、出荷までで販売や消費を含まない。環境影響を測る単位(機能単位)は、面積(10a)、生産物(kg)とした。
2. 二酸化炭素排出量を面積当たりで比較すると、促成、加温半促成、越冬、加温抑制、無加温抑制、無加温半促成、露地の順に多く、単位重量当たりでは、越冬、促成、加温半促成、加温抑制、無加温抑制、無加温半促成、露地の順であり、両者とも加温を行う作型での排出量が多かった(図1)。
3. 単位面積当たり二酸化炭素排出量には、促成栽培と露地栽培の間に19倍の差が見られた。単位生産物重量当たりでは、越冬栽培と露地栽培の間に13倍の差が見られた(図1)。排出量の内訳を見ると加温作型では、燃料消費に伴う排出量が最も多く、無加温作型では、ビニールや段ボールなどのその他製造に伴う排出量が最も多かった図1)。
4. 埼玉県北部の促成及び半促成作型で、加温方式を重油ボイラー単独から重油ボイラーと園芸用ヒートポンプ(空気熱源式、発熱量28kw)2台の併用に変更した場合の試算を行ったところ、単位面積当たり二酸化炭素排出量は、促成栽培で40%、半促成栽培で39%減少した(図2)。促成栽培における排出量の内訳を見ると、燃料・電力消費による排出量が49%減少し、機械施設製造による排出量が29%増加した。
5. キュウリ加温栽培では、二酸化炭素排出量がきわめて大きく、燃料・電力が6〜8割を占める。ヒートポンプの利用など加温由来の二酸化炭素排出抑制技術利用が重要である。

[成果の活用面・留意点]
1. 農産物にカーボンフットプリント表示をするには、商品種別算定基準(PCR)の認定、算定結果の検証等の手続きが必要となる。
2. .評価方法は、燃料・電力消費は積み上げ法、その他は産業連関表による環境負荷原単位データブック(3EID)を利用している。

[具体的データ]

(埼玉県農林総合研究センター)

[その他]
研究課題名:低炭素化社会に対応した環境負荷表示方法の解明
予算区分:県単
研究期間:2009〜2010年度
研究担当者:本間利明、増山富美子(埼玉農総研)

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