麦・大豆の小明渠浅耕播種栽培における補助明渠の施工法


[要約]
小明渠浅耕播種栽培は、額縁明渠への連結を手作業で行う必要があったが、溝堀機で播種行程に沿って補助明渠を施工することで、手作業を省略でき、苗立ち安定につながる。

[キーワード]麦、大豆、小明渠浅耕播種、溝堀機、補助明渠

[担当]三重農研・経営植物工学研究課
[代表連絡先]電話:0598-42-6356
[区分]関東東海北陸農業・作業技術
[分類]技術・普及

[背景・ねらい]
小明渠浅耕播種機を使用した麦大豆栽培では、播種機スタート地点から数メール間は小明渠が不完全であるため(図1施工前)、手作業により額縁明渠に連結する必要がある。また、枕地内側の小明渠図1施工前)は片道作業のため小明渠の断面積が小さく降雨量によっては排水能力が不足する場合がある。そのため、手作業の解消と排水機能を向上させる作業方法を確立する。

[成果の内容・特徴]
1. 麦・大豆の小明渠浅耕播種後に、溝堀機(図2)を使用して図1の施工手順に示す作業順序に従って補助明渠を施工する。施工することで、小明渠から額縁明渠へ水が流れやすくなるため、手作業による額縁明渠へのつなぎを省略できる。
2. 作業方法は、図1施工手順に従って行う。まず、スタート位置に移動して作業を開始する。1を作業し溝堀機がaに達したら作業をやめ2の位置に溝堀機を移動させる。枕地に沿って掘り進み、aに達したら3の位置に移動させる。3を掘り進みaの位置に達したら4の開始位置(a地点)へ移動する。4を掘り進みbの位置に達したらa地点の周辺(補助明渠の交差する部分)と同様に作業順にしたがって作業を進める。この作業順序とすることで飛散土による小明渠の埋まりを少なくできる。
3. 本施工法は、慣行栽培で行われている中2カ所の直進のみの補助明渠(図1注)に比べると、30aで約5分作業時間は余分にかかるものの、播種後の降雨に対して苗立ちが向上する(図1)。
4. 飛散土の堆積部分は覆土が厚くなり、苗立ちが低下する場合がある(図4)。
5. 使用する溝堀機(図2)が右側にオフセットされており、飛散土が左側に飛ぶため、補助明渠は右回りに作業する。左回りでは、枕地作業時に小明挙を横断しながらの作業となり明挙の深さが一定にならず、飛散土が直進部分の小明渠を埋めてしまう。
6. 小明渠浅耕播種は、通常中央直進部分を播種した後、枕地を含んだ外周部分を2回から3回まわって播種する(図1施工前)が、外周部分の播種は右回りに作業する(左回りに作業すると飛散土によって小明渠が埋まる部分が多くなる)。

[成果の活用面・留意点]
1. 道路側の枕地を作業する場合は石等の飛散に注意する。
2. 額縁明渠の開口幅は25cm以上が望ましい。
3. 補助明渠は播種後できるだけ速やかに施工することが望ましい。施工が遅れると発芽が始まり飛散土の影響に加えてトラクタのタイヤによる踏圧で走行部分の苗立ちが低下する。
4. 補助明挙を深く掘りすぎると飛散土が多くなるため、20cm程度とする。
5. 土壌水分が高い場合にはトラクタの轍が深くなるためため圃場が乾いている時に作業する。
6. 作業方法は、30a区画 (長辺100m×短辺30m) を基本にした場合である。

[具体的データ]
図1補助明渠の施工位置及び作業順序
 図2 補助明渠の施工 図4補助明渠施工時の飛散土による苗立ちへの影響(小麦)

(中西 幸峰)

図3補助明渠が苗立ちに与える影響(小麦)
[その他]
研究課題名:温暖地湿田のイネ直播・浅耕栽培を基軸とする水田輪作技術の体系化と実証
予算区分:水田底力
研究期間:2007〜2011年度
研究担当者:中西幸峰、中山幸則、大西順平

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