自給飼料と油実の混合割合を高めたTMRは泌乳牛の飼料として有用である


[要約]
泌乳前期の乳牛にトウモロコシサイレージや油実、食品製造副産物の給与割合を高め粗脂肪含量を7.5%としたTMRを給与しても、乳生産に影響を及ぼさず、飼料コストの低減および乳中の共役リノール酸の増加が可能である。

[キーワード]トウモロコシサイレージ、油実、泌乳前期、乳生産、TMR、飼料コスト低減、共役リノール酸、食品製造副産物

[担当]栃木酪試・酪農技術部・飼養技術研究室
[代表連絡先]電話:0287-36-0768
[区分]関東東海北陸農業・畜産草地(大家畜)
[分類]技術・参考

[背景・ねらい]
近年、穀類の高騰が畜産経営を圧迫しており、自給粗飼料の利用拡大と安価な食品製造副産物の活用により飼料費の低減を図ることが解決策のひとつとして期待されている。
また、食品に対する消費者のニーズは安全・安心はもとより、高品質や機能性物質を多く含む食品を求めるなど多様化してきている。このため、生乳の高い生産力を保ちつつ、多様化した消費者ニーズに対応した飼養管理技術の開発が期待されている。こうした中、リノール酸が多く含まれる大豆などの飼料を給与することで機能性物質である共役リノール酸(CLA)が乳中に生産されることが知られている。
 そこで、トウモロコシサイレージと油実、食品製造副産物の増給により粗脂肪含量を高めた飼料の泌乳牛への給与が、乳生産、飼料コストの低減および乳中の共役リノール酸量に及ぼす影響について検討する。

[成果の内容・特徴]
1. 2産以上の泌乳前期のホルスタイン種乳牛24頭(栃木県他3県の試験場)を対照区と脂肪区に分け供試する。対照区には乾物比で輸入チモシー乾草20%、圧片トウモロコシ21%を給与する(粗脂肪含量4.2%)のに対し、脂肪区では輸入チモシー乾草と圧片トウモロコシをトウモロコシサイレージ、乾熱加熱大豆、綿実、トウフ粕およびフスマに置き換え(粗脂肪含量7.5%)(表1)、それぞれTMRとして分娩後15週間給与する。
2. 乾物摂取量、乳量および乳成分は試験区間に差がない(表2)。
3. 第一胃内容液のpH、総VFA濃度、酢酸/プロピオン酸比、アンモニア態窒素および血液性状は試験区間に差がない(表3)。
4. 飼料費および乳飼比は脂肪区で低く、対照区と比較して脂肪区では乳飼比を約30%抑えられる(表2)。
5. 乳中脂肪酸含量は、油実、食品製造副産物を多給し粗脂肪含量を7.5%とした脂肪区でステアリン酸、バクセン酸(tVA)、オレイン酸、リノール酸、αリノレン酸、ルメニン酸(c9t11-CLA)が高い(表4)。

[成果の活用面・留意点]
1. 飼料自給率向上、低コスト乳生産技術として活用可能である。
2. 共役リノール酸の増加により、牛乳の高付加価値化が期待できる。
3. 本技術を活用する場合は粗脂肪含量をはじめ給与飼料の成分を把握することが不可欠であり、NCWFE含量が低下しないよう飼料給与設計することが望ましい。
4. 今回は2産以上、分娩後15週間の泌乳牛についての結果である。また、脂肪源として主に油実を用いており、高脂肪飼料の活用にあたり脂肪源となる飼料の種類や加工形態による影響の検討が必要である。

[具体的データ]


(栃木酪試)

[その他]
研究課題名:乳質改善のための乳中脂肪酸組成を制御する飼養管理技術の確立
予算区分:県単
研究期間:2009年度
研究担当者:舘野綾音、田村哲生(東京農総研)、佐藤精(愛知農総試)、西川潤(千葉中家保)、笠井史子(千葉畜総研)、伊藤和彦(山梨酪試)、梶川博(日大生物資源科学部)、竹中昭雄(国際農林水産業研究センター)、大谷文博(畜産草地研)

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