低品質ウシ性判別胚の保存にはクライオトップ法が有効である


[要約]
クライオトップを用いたウシ性判別胚のガラス化保存において、ストロー内希釈液の組成は受胎率に影響を及ぼし、0.2モルSucroseを添加した希釈液を用いることにより、低品質ウシ性判別胚(Cランク)でも約70%の生存率が得られ、受胎も得られる。

[キーワード]クライオトップ、ガラス化保存、性判別、低品質胚、ウシ、ストロー内希釈

[担当]静岡畜研・酪農科
[代表連絡先]電話:0544-52-0146
[区分]関東東海北陸農業・畜産草地(大家畜)
[分類]技術・参考

[背景・ねらい]
ウシ性判別胚の保存は、ガラス化保存法が一般的に用いられているが、野外普及のためには、農家の庭先で簡便に耐凍剤希釈ができる手法が必要である。超急速ガラス化保存法であるクライオトップ(CT)法1)はウシ性判別胚の保存法として有効であり、野外で簡易に耐凍剤を希釈できるストロー内希釈法の有効性も報告されている。そこで、ストロー内希釈法に適した希釈液を検討するとともに、今まで保存が困難であった低品質ウシ性判別胚(Cランク)をCT法で保存し、低品質ウシ性判別胚の保存法としてのCT法の有効性を確認する。
1) kuwayama.M (1998), J.Assist.Reprod.Genet.,17(8):477

[成果の内容・特徴]
1. 性判別目的で約10%の細胞を採取後、CT法で保存したウシ性判別胚(A、Bランク)を0.2MのSucrose(Suc)を含む20%子牛血清(CS)加D-PBS(38℃に加温)を用いてストロー内希釈(図1)を行うと、56.5%の受胎率が得られる(表1)ことから、本希釈液はCT法のストロー内希釈液として有効である。
2. CT法で保存した低品質ウシ性判別胚は、0.2MのSucを含む20%CS加D-PBS(38℃に加温)を用いてストロー内希釈を行うと、約70%の生存率が得られる(表2)。 
3. CT法で保存した低品質ウシ性判別胚の移植で、33.3%(2/6)の受胎率が得られることから、CT法を用いることにより低品質ウシ胚の性判別利用が可能である(表3)。

[成果の活用面・留意点]
1. 低品質ウシ性判別胚(intact胚を含む)の保存法として活用する。
2. 希釈液の入ったストロー内にCTのシート部(胚)を5秒以内に入るよう、手技に迅速性が求められる。5秒以上10秒以内では、受胎例は得られなかった(0/4)。
3. 希釈液を38℃に保温して、実施することが重要である。

[具体的データ]
図1 ストロー内希釈法
表1 ストロー内希釈法における希釈液の違いと移植成績(A、Bランクウシ性判別胚)
表2 CT法で保存した低品質ウシ性判別胚の生存性評価
表3 CT法で保存した低品質ウシ性判別胚の移植成績

(佐野文彦)

[その他]
研究課題名:低品質受精卵の有効利用技術の検討
予算区分:県単
研究期間:2008〜2009年度
研究担当者:佐野文彦、土屋貴幸(静岡県東部家保)、小柳寿文、小林幸惠、永田浩章(静岡県東部家保)、神尾泰宏

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