ブドウ「巨峰」、「ピオーネ」の省力栽培体系モデル


[要約]
「巨峰」、「ピオーネ」で、短梢剪定の導入、ジベレリン処理や摘粒、新梢管理の省力化技術を組み合わせると、果房管理などが集中する時期の作業時間を35%、年間の作業を20%削減できる。花穂上部の支梗を用いる方法で、さらに省力効果が期待できる。

[キーワード]ブドウ、省力、巨峰、ピオーネ、経営指標

[担当]山梨果樹試・栽培部
[代表連絡先]電話:0553-22-1921
[区分]関東東海北陸農業・果樹
[分類]技術・参考

[背景・ねらい]
これまでブドウにおいて果房管理を中心に省力化技術を開発したが、これらの技術を体系化した場合の労働時間や果実品質への影響については未検討である。そこで、導入可能な技術を組み合わせて実証栽培を行い、慣行栽培(長梢剪定)と比較した省力化の程度や果実品質を明らかにし、技術の導入促進を図る。

[成果の内容・特徴]
1. 「巨峰」、「ピオーネ」の栽培で、ジベレリン(GA)による花穂伸長を利用した摘粒作業の省力化、フラスターの新梢伸長抑制効果を利用した新梢管理の省力化、房づくり方法の改良、GA1回処理、短梢剪定の導入による省力体系は図1のとおりである。
2. 花穂伸長による摘粒作業の省力化は、3年(2007〜2009)の平均で27%(55→40時間)の作業時間の削減効果がある(体系A)。また、花穂上部の支梗を使用する房づくり(体系B)では、45%(55→30時間)の削減効果がある(表1)。
3. フラスターの散布は、開花時の摘心作業を削減できるだけでなく、その後の副梢の発生や伸長を抑制でき、新梢管理の作業時間を30%(28→19時間)削減できる(表1)。
4. 省力体系の作業時間を試算すると、慣行の長梢剪定栽培と比較して、年間の作業時間を22%(352→276時間)削減できる。とくに労力が集中する5〜6月の果房、新梢管理時間は、32%(155→105時間)削減できる(体系A)。また、花穂上部の支梗を利用する方法(体系B)では、さらに省力効果が高まり、5〜6月の作業時間を40%以上削減できる(表1)。
5. 省力栽培体系による栽培でも慣行とほぼ同等の果実品質が維持できる。しかし、花穂上部の支梗を使用した場合、「巨峰」では果粒肥大が劣ることがある(表2)。

[成果の活用面・留意点]
1. 経営規模を拡大する際の省力栽培体系として、経営計画立案の際の参考資料とする。
2. 果樹振興計画等を策定するための基礎資料とする。
3. 省力栽培で使用する生育調節剤および使用法はいずれも農薬登録がある。
4. 省力程度には品種、年次などによって差がある。
5. ジベレリン1回処理、支梗の利用で果粒肥大が劣る年がある。年次によって品質差が生じる可能性を考慮して経営に組み入れる。

[具体的データ]
図1 「巨峰」、「ピオーネ」の省力栽培体系モデル
表1 省力体系と慣行体系における作業時間の比較 (時間/10a)
表2 「巨峰」、「ピオーネ」の省力体系で生産した果実の品質(2009)

(齊藤 典義)

[その他]
研究課題名:ブドウの既存省力栽培技術の体系化
予算区分:県単
研究期間:2007〜2009年度
研究担当者:齊藤典義、宇土幸伸、里吉友貴、三森真里子

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