根域加温によるハウスイチジクの生育促進効果


[要約]
12月上旬加温のハウスイチジクにおいて、加温開始と同時に根域を20℃に加温すると、室温が15℃でも、加温後約80日間、室温18℃と同等の生育促進効果がある。しかしそれ以降根域加温を継続しても、室温18℃の生育が早く、収穫時期も早くなる。

[キーワード]ハウスイチジク、根域加温、地温、生育促進

[担当]愛知農総試・園芸研究部・落葉果樹グループ
[代表連絡先]電話:0561-62-0085
[区分]関東東海北陸農業・果樹
[分類]技術・参考

[背景・ねらい]
慣行のハウスイチジク加温栽培は、5月末から収穫を開始すため、12月上旬に加温開始し、加温終了まで最低室温を18℃で管理する。暖房用燃料の節減を目的に、加温開始から根域を加温し、室温を15℃に下げたところ初期生育は室温18℃と同等であったが、収穫時期が遅れた。そこで、根域加温によるイチジクの生育促進効果をより明らかにするため、ポット植えのイチジクを用いて検証する。

[成果の内容・特徴]
1. 12月上旬の加温開始と同時に、図1の方法で水を加温して地温を20〜22℃に維持する。加温開始後90日の3月中旬以降、根域無加温の地温が高くなり、根域加温との地温差は小さくなる(図2)。地温と同様に室温も3月中旬以降は15℃設定と18℃設定の温度差が小さくなり、2℃程度の差になる(データ略)。
2. 根域無加温では室温を15℃、18℃のいずれにした場合も、加温開始から発根まで11〜12日、発芽まで21日を要するが、根域加温すると室温15℃でも加温開始後7日で発根し、20日で発芽する(表1)。
3. 新梢の節数は、根域加温すると室温を15℃にしても、加温開始後約80日まで室温18℃根域無加温と同等になる。それ以降は、室温15℃で根域加温をしても、根域加温しない場合と節数増加の速さは同等で、室温18℃加温の方が生育が早くなる(図3)。
4. 根域加温して加温終了まで室温15℃設定とすると、収穫開始期は室温18℃根域無加温より10日、50%収穫終了日は2日遅れる。しかし、室温15℃根域無加温より収穫開始日は10日、50%収穫終了日は8日早くなる(表1)。

[成果の活用面・留意点]
1. 加温開始後80日以降は、根域加温を継続しても収穫時期が遅れるため、生育の促進には室温高めることが必要である。
2. 加温開始から80日間室温を18℃から15℃に下げて管理し、それ以降は室温を18℃で管理した場合、温室暖房燃料消費試算ツール(野茶試)によると18.5%の燃料が節減される。ここで加温開始から80日間のみ根域加温した場合は、一作の燃料削減率は13〜15%程度になると推定される。

[具体的データ]
図1 根域加温の方法 図3 新梢節数の推移(2008-2009)
                          図2 試験区の旬別日平均地温
 表1 加温開始から発根・発芽および収穫までの日数(2008-2009)(上林義幸)
[その他]
研究課題名:東海地域における原油価格高騰対応施設園芸技術の開発
予算区分:実用技術
研究期間:2007〜2009年度
研究担当者:上林義幸

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