施設栽培におけるカンキツ品種の特性比較


[要約]
2月下旬から3月上旬に加温を開始する施設栽培で「はれひめ」、「麗紅」、「津之輝」、「たまみ」、「せとか」の5品種を比較した。施設栽培に適した品種は、樹冠容積あたりの収量が多く、果実品質が優れた「せとか」と「たまみ」である。

[キーワード]施設栽培、カンキツ、新品種、品種比較

[担当]愛知農総試・園芸研究部・常緑果樹グループ
[代表連絡先]電話:0533-68-3381
[区分]関東東海北陸農業・果樹
[分類]技術・参考

[背景・ねらい]
原油価格の高騰対策として、重油使用量の多いハウスミカンから、2月下旬に加温する施設を利用したカンキツ新品種への改植が進んでいる。そこで、最近登録されたカンキツ品種「はれひめ」、「麗紅」、「津之輝」、「たまみ」、「せとか」の施設栽培における収量性及び果実品質を比較検討し、有望品種を選定する。

[成果の内容・特徴]
1. 2月下旬から3月上旬に最低温度15℃に設定して加温開始すると、収穫盛期は「はれひめ」が11月中旬と最も早く、「せとか」が1月中下旬と最も遅い(表1)。
2. 1樹あたりの3年間の累積収量は「せとか」、「はれひめ」が多く、「たまみ」、「津之輝」が少ない(図1)。
3. 1果平均重は「麗紅」が最も大きく、「はれひめ」が最も小さい。2009年度の樹冠容積は「麗紅」が最も大きく、「たまみ」が最も小さい。樹冠容積あたりの収量は「せとか」、「たまみ」、「はれひめ」が多く、「麗紅」、「津之輝」が少ない(表2)。
4. 果実品質は、「はれひめ」は果肉歩合が低く、着色よりも減酸が早いため完全着色時のクエン酸含量が低い。「麗紅」は可溶性固形物含量(以下糖度)が低く、果皮色の赤みが強く、剥皮性が良い。「津之輝」は糖度が高く、果皮色の赤みが強い。「たまみ」は糖度が最も高く、剥皮性が良い。「せとか」は果肉歩合、糖度が高く、剥皮性が良い(表3)。
5. 以上より、樹冠容積あたりの収量が高く、果実品質が優れた施設栽培に適した品種は「せとか」と「たまみ」である。

[成果の活用面・留意点]
1. 「たまみ」は樹冠の拡大が遅いので、植栽間隔を狭くするか着果させずに早期の樹冠拡大を図る。また、生理落果後に裂果しやすいため、土壌水分を急変させない。
2. 「せとか」は開花期の気温が高いと果形を乱しやすいため、最高気温をやや低めに設定する。
3. いずれの品種も過度な着果負担により隔年結果を起こす恐れがあるため、適正着果に努める。

[具体的データ]

(浅井信吾)

[その他]
研究課題名:施設栽培に適した中晩生カンキツ新品種の選定
予算区分:県単
研究期間:2004〜2009年度
研究担当者:浅井信吾、市川啓、坂野満

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