冬どりキャベツに発生する内部黒変症状の発生要因


[要約]
冬どりキャベツに発生する内部黒変症状は、結球内部の水滴の氷結がキャベツ葉内の凍結を促進することと、凍結後の急速な解凍が原因で発生する凍害壊死斑である。

[キーワード]キャベツ、凍害、内部黒変症状

[担当]群馬農技セ・園芸部・野菜第二係
[代表連絡先]電話:0270-61-0066
[区分]関東東海北陸農業・野菜
[分類]研究・参考

[背景・ねらい]
冬期に収穫されるキャベツは、低温による凍害の発生で生産量が減少することがある。凍害は結球外葉が壊死する外葉壊死症状が一般的に発生する。一方、冬期栽培キャベツでは、結球内部に薄墨色の斑紋や黒い斑点が現れる内部黒変症状の発生が見られる。内部黒変症状は、外観上の症状が無いことから出荷時に被害キャベツの除去が難しく問題となっているが、発生原因が明らかになっていないため効果的な対策が行われていない。そこで、内部黒変症状の発生条件を解析し、その発生原因と形成過程を明らかにする。

[成果の内容・特徴]
1. 2月上旬に、結球したキャベツの外葉を剥ぐと、結球内部の葉の表面に水滴が氷結した多数の氷塊が認められる。氷塊は、気温の上昇とともに水滴に変化するが、葉の表面には変色した跡が残る(図1)。氷塊の跡は、内部黒変症状の発生部位(図1)に類似している。
2. 黒変症状発生部位からは、キャベツの病原菌は検出されない。
3. キャベツ株の、葉表面にスプレーで水滴を噴霧し、その後−5℃の低温下で水滴を氷結(植氷)させた後、一定時間経過後に20℃の室内で急速に解凍すると、キャベツ株は、15分間の低温遭遇で葉に壊死斑が形成される。植氷なしでは、60分間の低温遭遇でも壊死斑は形成されない(表1)。また、壊死斑の形成には品種間差が認められる(表1)。
4. 植氷後に、一定時間経過後に、0℃で6時間、次いで5℃で18時間、さらに20℃で48時間と緩やかに解凍したキャベツ株は、60分間の低温遭遇後でも葉に壊死斑は形成されない(表2)。
5. キャベツ結球葉の部位別温度推移は、内部黒変症状の発生が多く見られる結球葉の3枚目で、日中急激に温度が上昇し、日変化が最も大きいことが観察される(図2)。

[成果の活用面・留意点]
1. 冬どりキャベツの寒害防止技術を開発する上での基礎知見となる。

[具体的データ]
図1 キャベツ結球内部の氷結(左)と黒変症状(右) 図2 キャベツ結球内部の部位別温度推移
表1 植氷とキャベツ葉の壊死斑形成の品種間差
表2 植氷、低温処理後の解凍方法がキャベツ葉の壊死斑形成に及ぼす影響

(金井 幸男)

[その他]
研究課題名:業務用需要に対応した露地野菜の低コスト・安定生産技術の開発
予算区分:実用技術
研究期間:2008〜2009年度

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