雑草イネによる赤米混入被害を軽減するための総合対策チェックリスト


[要約]
雑草イネによる赤米混入被害を軽減するためには、雑草イネの防除とまん延防止対策を発生地域全体で取り組む必要がある。チェックリストを活用した対策を徹底することにより、雑草イネのまん延を防止して、それによる赤米混入被害を軽減できる。

[キーワード]雑草イネ、赤米混入、対策チェックリスト、徹底防除、種子拡散防止

[担当]中央農研・雑草バイオタイプ・総合防除研究チーム
[代表連絡先]電話:029-838-8953
[区分]共通基盤・雑草、関東東海北陸農業・関東東海・水田作畑作
[分類]技術・普及

[背景・ねらい]
雑草イネは2010年までに11県で発生が確認されている。これらの雑草イネの多くは玄米色が赤く(赤米)、それによる赤米混入被害が水稲直播栽培のみならず移植栽培でも報告されている(図1)。被害の拡大を防ぐために早急な対策が求められていることから、雑草イネの発生要因や種子生存率等から動態モデルを用いて今後の被害を予測するとともに、早急に実施すべき対策項目を整理してチェックリストを作成して、雑草イネによる赤米混入被害の軽減に役立てる。

[成果の内容・特徴]
1. 水稲収穫期に雑草イネが0.2本/m2(5m2に1個体)以上残ると,水稲収穫物への赤米混入率は一等米規格規程での混入限界0.1%を超える。しかし、3年以上継続して雑草イネを完全に取り除くことにより、赤米混入被害を軽減することができる(図2)。
2. 被害が深刻な地域では、対策チェックリストにあるチェック1(水稲収穫までの防除)、4(脱落種子の死滅促進)、5(収穫物からの赤米除去)、6(翌年の作付・栽培法の検討)により赤米混入被害の軽減をはかる(図3)。
3. 被害地域では作業機械を共有する圃場で赤米混入被害が大きい傾向があることから、被害軽減のためには、チェック3(種子の拡散防止)により雑草イネのまん延を防ぐことが重要である(図3)。
4. 赤米混入が初めて確認された場合には、上記の対策の他にチェック2(周辺や地域内の雑草イネの精査)と5(収穫物の精査)を実施して、地域内での雑草イネのまん延を防ぎ、それにより赤米混入被害の拡大を防止する(図3)。

[成果の活用面・留意点]
1. 生産者や稲作技術指導員(農業普及指導員、JA職員等)が雑草イネによる赤米混入被害を軽減するために活用する。
2. 雑草イネによる赤米混入被害を軽減するための総合対策チェックリストは、中央農業総合研究センターのホームページを参照する。
3. チェックリストにある対策項目の実施には、移植栽培での雑草イネ防除法、脱粒特性からみた防除時期、雑草イネの形態と水田内での識別方法、雑草イネ種子の生存動態等の「雑草イネ」「雑草性赤米」関連成果情報(平成14, 18, 19, 20, 21, 22年度関東東海北陸農業試験研究推進会議・関東東海水田作畑作部会成果情報)を活用する。
4. 水稲栽培条件や作付体系によっては、対策チェックリストにある全ての項目を実施できるとは限らないので、普及指導機関と相談しながら実施項目を選択する。
5. 図3のチェック4について、温暖地以北では冬期不耕起により土壌表面の雑草イネ種子の死滅と鳥類による補食が促進されるのに対して、温暖地以南の湿田では耕起により土壌中に種子が埋め込まれることによって死滅が促進されることに注意する。

[具体的データ]
図1 雑草イネ発生水田の状況とそれによる水稲玄米への赤米混入事例(右下)
図2 雑草イネによる赤米混入率の予測
図3 雑草イネによる赤米混入被害を軽減するための総合対策チェックリスト

(渡邊寛明、牛木純、赤坂舞子)

[その他]
研究課題名: 難防除雑草バイオタイプのまん延機構の解明および総合防除技術の開発
中課題整理番号: 214b
予算区分: 基盤
研究期間: 2006〜2010年度
研究担当者: 渡邊寛明、牛木純、赤坂舞子、細井淳(長野県)、酒井長雄(長野県)、青木政晴(長野県)、渡邉修(信州大)
発表論文等:牛木ら(2008)雑草研究、53(3):128-133

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