水稲「コシヒカリ」のいもち病抵抗性同質遺伝子新品種候補系統「関東IL9号」


[要約]
水稲品種「関東IL9号」は、いもち病国際判別品種「IRBL9-W」が持ついもち病抵抗性遺伝子Pi9を、戻し交配とDNAマーカー選抜により「コシヒカリ」に導入したいもち病抵抗性同質遺伝子系統である。

[キーワード]イネ、コシヒカリ、同質遺伝子系統、いもち病抵抗性、Pi9、DNAマーカー

[担当]作物研・稲マーカー育種研究チーム、低コスト稲育種研究チーム
[代表連絡先]電話:029-838-8950
[区分]作物、関東東海北陸農業・関東東海・水田作畑作
[分類]技術・参考

[背景・ねらい]
殺菌剤の使用を低減するために、いもち病抵抗性品種の導入が進められている。抵抗性品種の育成には圃場抵抗性と真性抵抗性が利用されているが、真性抵抗性はいくつかの遺伝子を組み合わせたマルチライン品種として主に利用されている。いもち病抵抗性に関するマルチラインの遺伝子をより多様化させるために、これまで日本では利用されなかった新しい抵抗性遺伝子を導入した同質遺伝子系統の開発を進める必要がある。そのため、国際イネ研究所が育成した国際判別品種の中から新たな抵抗性遺伝子としてPi9 を選定し、「コシヒカリ」に導入する。

[成果の内容・特徴]
1. 「関東IL9号」は、いもち病抵抗性遺伝子Pi9 を保有する国際判別品種「IRBL9-W」に「コシヒカリ」を5回戻し交配し、DNAマーカー選抜により育成された同質遺伝子系統である(表1)。
2. 「関東IL9号」は、いもち病抵抗性遺伝子Pi9 を持つと推定され、日本の主要ないもち病菌系に抵抗性を示し、いもち病の発生を抑制する(表2)。
3. 第6染色体短腕に「IRBL9-W」由来の染色体断片約1.9Mbpを有し、それ以外の染色体領域は「コシヒカリ」に置換されている(図1)。
4. 「関東IL9号」は、いもち病抵抗性を除く主要な形質で「コシヒカリ」と同質である(表1)。

[成果の活用面・留意点]
1. 「関東IL9号」は、「コシヒカリ」のいもち病抵抗性マルチライン品種として活用できる。
2. 栽培適地は「コシヒカリ」栽培地域である。
3. いもち病防除以外の栽培管理は、「コシヒカリ」の栽培基準に準じて行う。

[具体的データ]

(常松浩史)

[その他]
研究課題名:稲病害虫抵抗性同質遺伝子系統群の選抜と有用QTL遺伝子集積のための選抜マーカー開発
課題ID:221-g
予算区分:委託プロ(新農業展開プロ)・交付金(基盤研究費)
研究期間:2004〜2010年度
研究担当者:常松浩史、根本博、春原嘉弘、加藤浩、平林秀介、竹内善信、前田英郎、佐藤宏之、田中淳一、池ヶ谷智仁、安東郁男、太田久稔、石井卓朗、井辺時雄、出田収、平山正賢

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