Ralstonia solanacearum によるスイゼンジナ青枯病(新称)の発生


[要約]
石川県で新たに発生したスイゼンジナの萎凋症状は、Ralstonia solanacearum によるスイゼンジナ青枯病(新称)である。

[キーワード]スイゼンジナ、萎凋症状、青枯病、Ralstonia solanacearum

[担当]石川農研・資源加工研究部・生物資源グループ
[代表連絡先]電話:076-257-6911
[区分]関東東海北陸農業・北陸・生産環境
[分類]技術・参考

[背景・ねらい]
スイゼンジナは葉裏の鮮やかな紫色が特徴のキク科多年生作物であり、石川県内では金時草と呼ばれる地域特産野菜である。
  2009年8月、石川県金沢市北部の中山間地においてスイゼンジナに導管の褐変を伴う萎凋症状が発生した。そこで、本症状の原因を究明するため病原の同定を行う。

[成果の内容・特徴]
1. スイゼンジナの株全体が萎凋し(図1)、葉の表面は光沢を失う。導管は褐変し、褐変部を水中に静置すると細菌の漏出が確認できる。
2. 褐変部からは、テトラゾリウムクロライド培地上で、中心が淡紅色で流動性の乳白色コロニーを呈する細菌が分離される(図2)。スイゼンジナへ接種すると萎凋症状が再現され、同様の特徴の細菌が再分離される。
3. 分離2菌株、再分離2菌株および対照菌株としてRalstonia solanacearum 8107株、8524株について、47項目の細菌学的性質を調査した結果(表1,一部データ省略)、L-酒石酸の利用能を除いてR. solanacearum 8524株と性状が一致する。また、6種類の糖を用いた生理型判別では、biovar3であるR. solanacearum 8524株と性状が一致する(表2)。
4. 以上から、スイゼンジナで発生した萎凋症状はR. solanacearum によるスイゼンジナ青枯病(新称)である。

[成果の活用面・留意点]
1. 本病が認められる圃場では、収穫時に用いるハサミなどによる作業伝染を防ぐ。
2. 本病の被害発生を防止するため、後作には、スイゼンジナのほか、ナス科植物等の青枯病に罹病性の作物を作付けしない。
3. スイゼンジナでは、ハイイロホソバノメイガ幼虫の根部食害によっても萎凋症状が発生するが、本病とは食痕の有無により区別できる。

[具体的データ]
図1 スイゼンジナの萎凋症状図2 分離菌株のコロニー

(石川県農業総合研究センター)

[その他]
研究課題名:野菜の化学農薬5割削減防除体系の確立
予算区分:国交付金(食の安全・安心)
研究期間:2009年度
研究担当者:安達直人、塚本昇市
発表論文等:安達、塚本(2011)北陸病虫研報、59(印刷中

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