米飯1粒の硬さと粘りの高感度検出技術
[要約]米飯1粒の硬さと粘りを表層と全体に分けて多面的計測することにより、米飯物性の識別性が高まり、特に表層の測定項目は米のタンパク質含量米飯の粘りの差異検出に適する。
食品総合研究所・素材利用部・穀類特性研究室  連絡先 0298-38-8045
部会名:食品  専門:食品品質  対象:水稲  分類:普及 
 
[背景・ねらい]
 米の需要拡大には、米の食味・品質特性の食品産業および消費者ニーズへの適合が不可欠である。本研究では、次世代稲作試料米を対象に、米飯1粒の多面的物性測定を行い、米飯物性に基づく米の食味・品質評価方法を確立する。
 
[成果の内容・特徴]
1.従来法では米飯3粒を完全に潰す大変形型圧縮試験が主であるが、本研究では、圧縮率の異なる2種類の圧縮試験により、米飯1粒の硬さと粘りを表層と全体に分けて多面的に計測することを特徴とする(図1)。炊飯は精白米10g(加水量1.6倍)による少量炊飯を行う。
 
2.全体の硬さが類似している米飯粒の表層の硬さとタンパク質含量の相関係数は、全体の硬さが0.30、表層の硬さが0.81であり、タンパク質含量が高い米ほど表層が硬くなりやすい(図2)。米飯粒の全体の硬さが同程度で表層の硬さが異なる場合には、表層の硬さがタンパク質含量の差異を捉えていることが示される。
 
3.米飯粒表層の粘りの測定項目とアミロース含量の相関は、粘りの波高値(-H1)よりも付着量(L3)の方が高く、アミロース含量の増加に伴って付着量が減少する(図3)。表層の付着量は、糯米、低アミロース米、中アミロース米、高アミロース米等の炊飯米の粘りの識別に適する。
 
4.以上より、低圧縮試験による表層の測定項目は米のタンパク質含量や炊飯米の粘りの差異検出に適する。
 
[成果の活用面・留意点]
1.米飯の物性は炊飯時の加水量などに大きく影響されるため、品種・系統間の物性を比較する場合には炊飯方法を統一することが必要である。
 
[具体的データ]
 
 
[その他]
研究課題名:新系統・育種素材の米の物理特性の高度評価技術の開発
予算区分:次世代稲作
研究期間:平成12年度(平成10〜12年)
研究担当者:岡留博司,豊島英親,大坪研一
発表論文等:
1)岡留ほか6名:米飯1粒の多面的物性測定に基づく米の食味評価,食科工,45,398−407(1998).
2)Okadome et al.: Multiple measurements of physical properties of individual cooked rice grains with a single apparatus, Cereal Chem.,76:855-860(1999).