[成果情報名] 酸素電極導入による一般生菌検査の簡易迅速化
[要   約] 初発菌数が多いほど早く酸素が消費される現象を利用し、酸素電極を導入して一般生菌数検査を簡易迅速化した。食品工場における実用化試験においても、細菌検査結果を現場の微生物制御へフィードバックする有用性が確認された。
[部   署] 食品総合研究所・企画調整部・食品衛生対策チーム
[連 絡 先] 食品衛生対策チーム 0298-38-8067
[成果区分] 普及
[キーワード] 一般生菌数、酸素電極、細菌検査、微生物制御、フィードバック

[背景・ねらい]
 食中毒の発生や腐敗の未然防止を目的として、細菌検査法の簡易迅速化を試みた。溶存酸素の消費速度は、食品の初発菌数に比例して速くなった。実験室のみならず、実際に稼動している食品工場においても、従来からの寒天培地法との比較検討を行い、実用性の確認を行った。



[成果の内容・特徴]
  1.  食品試料から抽出された微生物による溶存酸素の消費に伴う電極出力の変化を、溶存酸素測定機(ダイキン環境研製、DOX-60F)を用いて、培地(日水製薬製普通ブイヨン)のみの出力を対照として35℃で比較した。一般生菌数(注1)が多ければ多いほど、電極出力の変化は早くなった。電極出力の変化速度から一般生菌数の推定が可能であった。

  2.  自主衛生検査であるため菌数の判定時間は任意に選択できるが、対照の電極出力の60%となる時間を選択した場合、100,000cfu/gの初発菌数では、6時間で判定が可能であった。さらに生菌数が多い場合は、より短時間で判定が可能であり、初発菌数が多い試料に対する警告手法としても有用であった。従来の標準寒天培地法では必要となる、段階希釈操作も不必要であった。

  3.  食肉、魚介類、野菜、穀類、ならびに厚揚げ等の加工食品への適応実験でも、従来からの寒天培地の結果と良い相関を示した。細菌の増殖が早いため細菌検査に及ぼす真菌の影響は、受けにくいことが判明した。
     複数の弁当、惣菜や食肉加工工場での実験から、製造現場等へ細菌検査結果のフィードバックや警告手段となりうることが判明した。

  4.  野菜煮物等の保存試験結果も、より迅速に得られ、原材料や静菌剤の配合、加熱温度や時間等加工法の比較検討にも有効であった。

  5.  本法の測定液を増菌培養液として、菌種の同定試験等に利用することも可能であった。



[成果の活用面・留意点]
 本法は、食品の自主衛生管理のために開発されたものである。食品中の菌数が多い場合は疑陰性となることは少ないが、菌数が少ない時には疑陰性と判定されることもある。通常試験液の希釈は不要であるが、高濃度の抗菌性物質が存在する場合は、希釈を行う必要がある。本法の大腸菌群(注2)ならびに大腸菌検査への適用実験は、現在進行中である。



[具体的データ]

注1) 一般生菌数:食品の微生物学的安全性あるいは微生物汚染評価の指標とするため、標準寒天培地を用いて35〜37℃で48時間培養し、出現したコロニー数を試料1g当りに換算して求められる値。
注2) 大腸菌群:衛生管理上の指標であり、加熱食品における大腸菌群の検出は加熱殺菌の不良あるいは加熱後の二次汚染を示唆する。BGLB培地やデソキシコレート培地を用いた48時間の培養後、判定される。



[その他]

研究実施課題名
予算区分
研究期間
研究担当者
発表論文等





微生物検出法の基礎技術の開発
経常研究
2000〜2002年度 (2001年度)
一色賢司・稲津康弘・川崎 晋・名塚英一
1) 酸素電極を用いた一般生菌数検査の簡易迅速化, 日本食品科学工学会誌, 48, 94-98(2001)
2) Estimation of Bacterial Cell Counts in Food Using Oxygen Electrode Sensor, 第88回国際食品保全学会講演要旨集, p.77 (ミネアポリス, 2001)