エチレン除去剤の評価とブロッコリーの鮮度保持包装における除去剤の効果


【要約】

 活性炭、モレキュラーシーブ、パラジウム、市販エチレン除去剤等のエチレン除去性能を、湿度と吸水の影響を中心に調べた。市販除去剤13種類のうち9種類に性能上の欠点が認められた。ブロッコリーの一般的な流通形態における除去剤の鮮度保持効果は、除去剤の性能に依存することを明らかにした。

【背景・ねらい】

 青果物の鮮度保持資材として各種のエチレン除去剤が市販されているが、そのなかには性能に疑問がもたれているものもあり、また、青果物の流通環境である高湿度条件や吸水した場合の影響は不明である。このため、公的な機関での性能評価が求められている。そこで、活性炭、モレキュラーシーブ、パラジウム、市販エチレン除去剤および天然資材のエチレン除去性能を明らかにするとともに、ブロッコリーの鮮度保持包装における除去剤の効果を明らかにする。

【成果の内容・特徴】

  1. 活性炭: 湿度に係わらずエチレン除去速度は速いが、除去は不完全である。また、吸水により除去したエチレンを放出する。

  2. モレキュラーシーブ: モレキュラーシーブ3Aには除去能力はなく、4A、5A、13Xは、乾燥状態ではエチレン除去性能が高いが、高湿度条件(RH75%および95%)では除去能力を完全に失う。また、吸水によるエチレンの放出もみられる。

  3. パラジウム: 高湿度環境で高いエチレン除去能力を示す。吸水の影響はない。

  4. 市販エチレン除去剤: 合成ゼオライト剤はモレキュラーシーブ同様の除去特性を示した。活性炭系除去剤に除湿剤が添加されていても、その効果はみられない。塩化パラジウム活性炭剤と臭素処理モレキュラーシーブ剤は、高湿度条件でも除去能力が高く、吸水によるエチレンの放出もみられない。フィルム状資材にはエチレン除去能は認められない。試験した13種類の市販エチレン除去剤(材)のうち9種類には何らかの欠点が認められた(表1)


  5. 天然資材: 乾燥大谷石は弱いエチレン除去能力を示すが、高湿度下では除去機能を失う。実用的なエチレン除去能力はない。籾殻、大鋸屑にもエチレン除去能は認められない。

  6. ブロッコリーの鮮度保持における除去剤の効果: 一般的なブロッコリーの流通形態(ポリエチレンフィルムによるハンカチ包装段ボール箱詰め)では、品質保持期間は用いたエチレン除去剤の性能に依存した(表2)


【成果の活用面・留意点】

 除去剤名については、研究室に問い合わせられたい。

【その他】

  1. 活性炭、モレキュラーシーブ、パラジウムのエチレン除去特性の評価.日食低温誌,22,191-197,1996.
  2. 市販エチレン除去剤(材)および天然資材のエチレン除去特性の評価.日食低温誌,1997,印刷中.