紫カンショ塊根の抗変異原活性
- [要約]
- 紫カンショ塊根に含まれるアントシアニン色素及びポリフェノール類には抗変異原活性がある。これらの成分は活性化された変異原の作用を直接消去する。
- 九州農業試験場・畑地利用部・畑作物変換利用研究室・甘しょ育種研究室
- 連絡先 0986-22-1506
- 部会名 食品、作物生産、流通加工、畑作
- 専門 加工利用
- 対象 いも類
- 分類 研究
- [背景・ねらい]
- 農産物の輸入自由化に対応して、南九州の基幹作物であるカンショの一層の需要促進を図るためにはカンショの高付加価値化が必要である。本研究では、カンショの機能性を明らかにする目的で、カンショ塊根のアントシアニン色素及びポリフェノール類の抗変異原活性について検討する。
- 紫カンショの水抽出物は、各種変異原に対し強い抗変異原活性(菌体はSalmonella typhimurium TA98を使用)を示す。抽出物は試薬としての変異原だけでなく、牛焼き肉のジメチルスルフォキシド抽出物(DEGB)に対しても顕著な抗変異原活性を示す。このことから、紫カンショの摂取は、調理・加工等で形成される発癌物質の生体へのリスクを抑制することが期待できる(表1)。
- これらの成分の抗変異原活性の機作は、抗変異原成分が変異原を活性化する肝臓の酵素類の作用を阻害するのではなく、活性化された変異原の作用を直接消去することによる(表2)。
- 紫カンショの抗変異原活性の主成分はアントシアニン色素による。カンショのポリフェノール類の一成分であるクロロゲン酸にも抗変異原活性がある(表3)。
- ポリフェノール類は外部組織に多く含まれているので、塊根全体の利用が望ましい。アントシアニン色素及びポリフェノール類は加熱等の加工処理を加えても安定である。
- ポリフェノール類は褐変の原因物質であることを認識して利用すべきである。
- [その他]
- 研究課題名:甘しょの生理活性成分の検索と特性解明
- 予算区分:経常
- 研究期間:平成9年度(平成7〜9年)
- 研究担当者:吉元 誠、奥野成倫(畑作物変換利用研究室)、山川 理(甘しょ育種研究室)、吉永 優(遺伝資源利用研究室)
- 発表論文等:
- カンショ水抽出画分の抗変異原活性、日本食品科学工学会第44回大会(平成9年度)、要旨集p.99(1997)
- Antimutagenic activity of water extracts from sweet potato, J.Tropic.Agric.
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