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キュウリホモプシス根腐病の圃場診断に基づく総合防除体系

[要約]

本病の被害未確認圃場からの病原菌検出および萎凋症状の発生程度に基づく圃場診断により、萎凋症状が未発生の圃場では整枝管理の変更、軽度発生の圃場では土壌pHの矯正、重度発生圃場では土壌消毒の実施を選択すれば効果的な総合防除が可能となる。

[キーワード]

キュウリ、ホモプシス根腐病、診断、総合防除、マニュアル

[担当]

東北農業研究センター・環境保全型農業研究領域

[代表連絡先]

024-593-6175

[区分]

東北農業・生産環境(病害虫)

[分類]

普及成果情報

[背景・ねらい]

ウリ科野菜の産地では近年ホモプシス根腐病の被害の拡大が重要な問題となっている。また、被害が未確認の圃場で根部の発病が認められる事例が多数確認された。

このように被害が認知されないまま病害が進行している汚染圃場は、今後新たな被害を生じる危険に加え、土壌を介した未汚染圃場への病原菌の拡散要因となるため早急の対策が必要である。そこで、このような潜在的な汚染圃場において病原菌を効率的に検出する圃場の診断法と被害が認められない段階から取り組める防除手法を開発するとともに、被害程度に合わせた防除手段を選択する総合防除体系を構築する。

[成果の内容・特徴]

  1. 被害未確認の圃場に対しては遺伝子検査あるいは生物検定による圃場診断を実施し、病原菌が検出された場合は、萎凋症状の発生程度に応じた防除対策を実施する(図1)。なお、遺伝子検査は土壌のDNAから病原菌に特有の遺伝子配列を増幅して蛍光検出する方法であり、数百筆単位の圃場診断に適している。一方、生物検定は簡便な手順で実施でき、20〜30筆程度の診断に適している。
  2. 病原菌が検出された露地キュウリ圃場で萎凋症状が確認されていない場合には、指標植物(本病に感受性の高いウリ科植物)を定植する(図1)。指標植物はカボチャ台キュウリの概ね7〜10日前に萎凋し、その時点から整枝管理を変更(停止)することで被害を緩和できる(図2)。ただし、この方法では菌密度の増加が避けられないため、次作からは土壌pH矯正やクロルピクリン剤を用いた土壌消毒による被害回避策を講じる。
  3. 病原菌が検出された露地キュウリ圃場で軽度の萎凋症状が確認されている場合には、転炉スラグにより土壌pHを7.5に矯正して防除する(図1図3)。ただし、病原菌に対する殺菌効果は認められず、激発圃場では土壌消毒と比較して防除効果が劣る場合がある(データ省略)。したがって、以前に著しい萎凋症状の発生が確認された圃場ではクロルピクリン剤によるマルチ畦内土壌消毒を行う(図1)。
  4. 病原菌が検出された年2作体系の施設キュウリ圃場では、(半)促成栽培で指標植物を定植する。指標植物が萎れた場合には栽培の終了を待たずに土壌還元消毒の準備を行い、抑制栽培が開始されるまでの6月下旬〜8月上旬の期間に、確実に土壌還元消毒を実施する(図1)。このように土壌還元消毒を実施することで、2作にわたり防除効果が持続する(データ省略)。

[成果の活用面・留意点]

  1. 普及対象:本病の発生を警戒するキュウリ圃場
  2. 普及予定地域・普及予定面積・普及台数等:東北地域内の本病発生県(岩手・宮城・秋田・山形・福島)を中心に、本病を警戒するキュウリ産地全般への普及が見込まれる。
  3. その他:詳細は「ウリ科野菜ホモプシス根腐病被害回避マニュアル」を参照する。同マニュアルは東北農業研究センターが出版・配布し、ホームページにも掲載する。なお、生産現場では必ず普及指導機関の指導の元利用することとする。

[具体的データ]

( 永坂厚)

[その他]

研究課題名
被害リスクに応じたウリ科野菜ホモプシス根腐病の総合防除技術の確立
予算区分
実用技術
研究期間
2010-2012 年度
研究担当者
永坂厚、古屋廣光(秋田県立大)、岩舘康哉(岩手農研)、山口貴之(岩手農研)、近藤誠(宮城農・園研)、辻英明(宮城農・園研)、永野敏光(宮城農・園研)、小野寺康子(宮城農・園研)、宍戸邦明(福島農総セ)、原有(福島農総セ)、木村善明(福島農総セ)、大竹祐一(福島農総セ)、高橋順一(福島農総セ)
発表論文等
ウリ科野菜ホモプシス根腐病被害回避マニュアル(2013 年2 月発行予定)