昆虫ウイルス由来遺伝子のイネへの導入と耐虫性の発現


[要約]
イネに昆虫の顆粒病ウイルス由来 Viral Enhancing Factor 遺伝子を導入し耐虫性の付与を試みた。シロイチモジヨトウに組換えイネを摂食させた結果、生育遅延や羽化率の低下及び核多角体病ウイルスの感染率の向上などの現象が認められた。
 滋賀県農業試験場・企画技術部・生物工学担当  
[連絡先]0748-46-3081
[部会名]生物工学
[専 門]バイテク  
[対 象]稲類
[分 類]研究

[背景・ねらい]
 昆虫の顆粒病ウイルスに存在する Viral Enhancing Factor (VEF) 蛋白質は、鱗翅目類昆虫の核多角体病ウイルスに対する感染率を高めることが明らかにされている。これは、VEF蛋白質が幼虫の中腸に作用し、囲食膜を構造的に破壊することによると推察されている。そこで、VEF遺伝子をイネに導入し、鱗翅目類に対する耐虫性付与の可能性を検討する。

[成果の内容・特徴]

  1. イラクサキンウワバ顆粒病ウイルス (Trichoplusia ni granulosis virus;TnGV)感染虫から精製したVEF蛋白質を人工飼料1g当り0.125μg添加し、シロイチモジヨトウにふ化直後から連続的に与えた結果、生育の遅延や羽化率の低下が認められた(図1)
  2. 日本晴のプロトプラストにポリエチレングリコール法によりVEF遺伝子を導入し、12系統のカルスを得た。PCR分析の結果、2系統で遺伝子導入が確認され、1系統から5個体(Line1~5)、他の1系統から10個体(Line6~15)の計15個体が再分化した。サザン分析、ノーザン分析を行った結果、3個体(Line8,14,15)でVEF遺伝子が正常に働いていると考えられた(図2)
  3. 組換えイネの葉を人工飼料に3%加え、シロイチモジヨトウを用いて生物検定を行った。RNAの発現が認められた組換えイネ(Line8)の葉を含む飼料をふ化直後から連続的に与えた検定虫では、生育の遅延及び羽化率の低下が認められた(図3)。また、蛹化の異常も観察された。
  4. 核多角体病ウイルス(SeNPV)の感染率を比較した結果、VEF遺伝子導入イネの感染率は、対照の約40倍であった。

[成果の活用面・留意点]

 現在、農林水産省農業研究センターの水田虫害研究室からイネ害虫であるアワヨトウの分譲を受け、生物検定を実施中である。

[その他]
 研究課題名:イネにおける遺伝子組換え技術の開発
 予算区分  :県単
 研究期間  :平成8年度(平成5~9年)
 研究担当者:北村治滋、森真理、近藤篤、渡辺健三
 発表論文等:育種学会雑誌、46巻、別冊2号、129、1996.

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