- [要約]
- グリセリンとショ糖による前培養と前処理により、ワサビ茎頂を包埋した人工種子に乾燥耐性が付与でき、-80℃のディープフリーザー中で2か月間の保存が可能であり、輸送の冷却にドライアイスが使用できる。
島根県農業試験場・作物部・生物工学科
[連絡先]0853-22-6650
[部会名]生物工学
[専 門]バイテク
[対 象]根菜類
[分 類]研究
- [背景・ねらい]
- 人工種子は乾燥に弱いことから中・長期間の保存が困難で、これが実用化の大きな障害となっている。一方、ビーズ乾燥法は液体窒素等の超低温下で人工種子の長期安定的な保存を可能にするが、-130℃以下の温度を維持する必要があるため輸送面で問題がある。そこで、輸送が容易で安価なドライアイス(約-80℃)を利用するワサビ人工種子の保存条件を検討する。
[成果の内容・特徴]
- 人工種子は、茎頂を20℃で約16時間前培養後、アルギン酸ビーズ中に包埋する。次に、約16時間の前処理をした後にシリカゲル等で含水率約20%(新鮮重比)まで乾燥する。
- 茎頂の前培養は0.1Mグリセリン+0.3Mショ糖を含む1/2MS固形培地で、前処理は1.0Mグリセリン+0.8Mショ糖を含む1/2MS液体培地が適しており、-80℃で2か月間の保存後も100%のシュート形成率である(表1)。
- 前培養後のワサビ茎頂に含まれる糖、グリセリンを液体クロマトグラフで定量したところ、ショ糖、果糖、ブドウ糖とも無処理の茎頂より多く、特にショ糖は約30倍であった。また、0.5Mグリセリン添加の前培養では約0.4Mのグリセリンが含まれる(図1)。
- 乾燥後のビーズ全体、ビーズのみ、茎頂のみにおけるガラス転移点を示差走査熱量計(DSC)で測定したところ-50~-60℃であった(図2)。したがって、-80℃で保存中の人工種子はガラス化していることが確認できた。
[成果の活用面・留意点]
- 処理後乾燥した人工種子はドライアイス中で輸送することが容易となるため、人工種子を利用した種苗生産、植物工場等への応用面で期待できる。
- -80℃で茎頂組織はガラス化しているが、液体窒素等による超低温保存の場合と異なり生理・生化学的活性は完全には停止していないため、再生植物体における変異の発生の可能性について確認する必要がある。
[その他]
研究課題名:培養苗の順化率の向上と保存技術による計画的種苗生産システムの開発
遺伝資源の収集・保存法の開発
予算区分 :地域バイテク・県単
研究期間 :平成8年度(平成7~8年)
研究担当者:松本敏一
発表論文等:ワサビ人工種子の乾燥耐性誘導による-80℃ディープフリーザー中での保存、
園芸学会雑誌、66巻、別1、246-247、1997.
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