イネ品種コシヒカリのカルス褐変を抑制する細胞培養法


[要約]
培地中の還元型窒素源を一般的な硫酸アンモニウムからアラニンに置換し、さらに、ショ糖の濃度を0.375%(従来の8分の1)に低下させると、従来培養が困難であったイネ品種コシヒカリのカルスは褐変を示さず他の品種と同等の増殖を示す。
 中国農業試験場・作物開発部・育種工学研究室  
[連絡先]0849-23-4100
[部会名]生物工学
[専 門]バイテク
[対 象]稲類
[分 類]研究

[背景・ねらい]
 細胞培養においてみられる品種間差異は、イネの細胞培養技術の問題点であり、細胞培養の利用を必要とするバイオテクノロジー技術をイネの育種素材作出に利用する際の障害となっている。コシヒカリは、日本晴等の品種に比べ培養が困難であることが知られている。この品種やその親品種である農林1号は、培養途中にカルスが褐変し増殖が不良となる。そこで、これらの品種にもバイテク技術を利用できるようにするため、カルスの褐変を抑制し良好な増殖を行わせることのできる細胞培養法の開発を目的とした。 

[成果の内容・特徴]

  1. 培地中のショ糖濃度を一般的な3%から0.375%に低下させることによって、液体培地中でのカルス増殖率の品種間差を小さくすることが可能である(図1)
  2. 褐変化を示す、コシヒカリや農林1号のカルスの増殖には、アラニンを還元型窒素源として含む培地が最適である。ショ糖濃度が0.375%で還元型窒素源がアラニンに置換された培地においては、これら2品種のカルスも他品種と同等の増殖率を示す(図1)
  3. 改変された培地においては、コシヒカリや農林1号のカルスは褐変を示さない(図2)
  4. 改変された培地で培養されたコシヒカリのカルスは、ベンジルアデニン(BA)を含む再分化培地において20%以上の植物体再分化率を示す(表1)

[成果の活用面・留意点]

 ヒノヒカリやひとめぼれなど、カルスが褐変を示すとされた他の品種にも適用が可能であるが、IR24など培養困難なインド型品種には適用できない。
 炭素源には、ショ糖以外にマルトースを用いることができる。

[その他]
 研究課題名:品種間差の克服及び汎用性のあるイネ細胞培養系の開発
 予算区分  :経常
 研究期間  :平成8年度(平成7~9年度)
 研究担当者:小川泰一、松岡誠、福岡浩之、矢野博
 発表論文  :イネ細胞培養における品種間差異の克服、農業技術、50巻、11号、1995.
             Effects of reduced nitrogen source and sucrose concentration on varietal differences 
             in rice cell culture、Breeding Science、46巻、2号、1996.

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