- [要約]
- 接ぎ木直後のトマト穂木の蒸散速度を小さくして苗の萎凋を防ぐためには、高い相対湿度を保ち、気孔開度を小さくするとともに、葉温の上昇を防ぐことが必要である。高相対湿度環境では、風は葉温の上昇を防いで蒸散速度を小さくする。その効果は光が強いほど大きい。
奈良県農業試験場・栽培技術担当(野菜)
[連絡先]07442-2-6201
[部会名]野菜・花き(野菜)
[専 門]栽培
[対 象]果菜類
[分 類]研究
- [背景・ねらい]
- セル育苗の普及にともない、大量の接ぎ木苗を低コストで養生できる装置の開発が望まれている。しかし、自然光下での養生では、日射等、環境の変動が大きいために好適な養生環境を保持することが難しく、このことが接ぎ木の低コスト化と生産安定を阻んでいる。そこで、相対湿度・光強度・葉温および風など、養生時の環境要因が穂木の蒸散速度に及ぼす影響を調べることにより、接ぎ木苗の萎凋を防止する上で最適の環境条件を解明する。
[成果の内容・特徴]
- 相対湿度が高いほど穂木の蒸散速度は抑制される(図1)。
- 光強度が大きいほど穂木の蒸散速度は大きくなる(図2)。
- 蒸散速度は、葉温が同じ場合は光強度が大きい方が、光強度が同じ場合は葉温が高い方が大きくなる(図2)。葉温の変化は気孔開度に大きな影響を与えないので(図3)、強光下での蒸散速度の増大には、気孔開度の増大と葉温の上昇とが同時に関与していることが明らかである。
- 高相対湿度環境においては、光が強くなるほど、風(風速1m/s)によって蒸散速度が小さくなる(図4)。
- 異なる光強度の下で周囲の空気の水蒸気飽差を徐々に変化させると、葉面境界層の飽差は、周囲の飽差が小さい場合にはこれより高く、周囲の飽差が大きくなると、逆にこれよりも小さくなる。この傾向は光強度が大きいほど著しい(図5)。このことは、相対湿度が高く、光が強い場合には、風を送ることによって穂木の蒸散速度を小さくできることを示している。
[成果の活用面・留意点]
- 接ぎ木後の苗の蒸散を抑制し萎凋を防ぐためには、100%に近い高相対湿度に保つこと、気孔開度を小さくすること、葉温を高めないことが必要である。
- 葉温を高めないための方法としては、遮熱資材の利用や苗に対する送風が有効である。
- 送風は、特に強光下での養生で効果が高い。蛍光灯などの冷光源では葉温の上昇が小さいために風の蒸散抑制効果が劣るが、相対湿度が高く光強度が大きい場合には効果が期待できる。
- 風は高相対湿度下での結露の防止にも有効である。
[その他]
研究課題名:野菜・花きの機械化作業体系の開発(1)育苗の省力化 2)簡易接ぎ木と小苗定植技術の開発
予算区分 :県単
研究期間 :平成8年度(平成7~9年)
研究担当者:信岡 尚(奈良農試)、小田雅行(大阪府大)、佐々木英和(野菜茶試)
発表論文等:トマト穂木の蒸散に及ぼす相対湿度・光強度および葉温の影響、園学雑、64巻4号、1996.
トマト穂木の蒸散に及ぼす風速および水蒸気飽差の影響、園学雑、印刷中.
セル成型苗の接ぎ木と養生順化、園芸学会平成8年度秋期大会シンポジウム要旨、1996.
目次へ戻る