子牛の市場出荷時体重を利用した黒毛和種種雄牛の遺伝的泌乳能力の推定


[要約]
子牛の市場出荷時体重を利用して黒毛和種の泌乳能力を改良する手法を開発するため、実際の子牛市場出荷時体重を用いて種雄牛の母性遺伝効果の期待後代差を推定した。期待後代差は同じ系統の種雄牛間でも差が認められた。
 中国農業試験場・畜産部・育種繁殖研究室、島根県立畜産試験場・肉用牛科
[連絡先]08548-2-0144、         0853-21-2631
[部会名]畜産
[専 門]育種
[対 象]肉用牛
[分 類]指導

[背景・ねらい]
 肉用牛の哺育能力を改良することは子牛の健全な発育を確保する上で重要であると言われてきた。しかし、現実には泌乳能力の遺伝的な指標がないために、改良には着手されていない。子牛市場出荷時体重は記録の収集が容易である反面、セリ名簿上の血統情報等だけを利用する場合、育種価推定のための数学モデルには限界がある。本研究では父-母方祖父モデルとアニマルモデルを比較検討するとともに、実際の子牛市場出荷時体重を用いて種雄牛の母性遺伝効果の期待後代差を推定した。

[成果の内容・特徴]

  1. 中国農業試験場畜産部で生産した黒毛和種の子牛の180日齢体重を用いて、父-母方祖父モデルによる期待後代差を制限最尤法を用いて推定し、アニマルモデルによる育種価と比較検討した。なお、数学モデルには変量効果として個体自身の有する相加的遺伝効果、相加的母性遺伝効果と両者の間の遺伝相関を取り上げた。
  2. 図1に推定した種雄牛の母性遺伝効果の育種価と期待後代差の関係を示した。相関係数は0.90、順位相関係数は0.84であり、種雄牛の遺伝的能力に関しては父-母方祖父モデルで十分に利用できる期待後代差が得られた。
  3. 1992年11月から1995年9月の間に島根県内の市場に出荷された子牛の出荷時体重の記録から15,694件を用いて父-母方祖父モデルにより種雄牛の個体自身の有する相加的遺伝効果と母性遺伝効果の期待後代差を推定した。
  4. 表1に市場出荷時体重に関する種雄牛の期待後代差を示した。同一系統の中でも個体自身の発育能力と泌乳能力に関しては遺伝的能力に変異があり、従来の系統の概念が必ずしもあてはまらないことが示唆された。

[成果の活用面・留意点]

 8カ月齢前後の子牛市場出荷時体重は農家の飼養環境の影響を強く受けているので、分析に用いる記録は出荷日齢等に制約を加える必要がある。

[その他]
 研究課題名:繁殖・肥育一貫生産による高品質牛肉生産技術体系の確立
      (1)育種価を利用した牛群の遺伝的能力の向上
 予算区分  :地域総合
 研究期間  :平成8年度(平成5~9年)
 研究担当者:島田和宏、大島一修、竹之内直樹、堂地修、小松正憲、高橋政義、
            土江博、安田康明、森脇稔幸、北村千寿、小林健宣、野村哲郎
 論文発表等:黒毛和種の子牛市場出荷時体重に対する母性遺伝効果の育種価の利用に関する検討、
      第91回日本畜産学会大会(講演要旨)、1996.

目次へ戻る