温暖地における放牧・採草用寒地型イネ科牧草の生産性比較


[要約]
トールフェスク、ケンタッキーブルーグラス、リードカナリーグラスは温暖地においても永続性および収量性が優れ、かつ平準的な季節生産性を示し、放牧あるいはロールベール向け草種として有望である。
山口県農業試験場・経営作物部・牧草育種研究室
[連絡先] 0839-27-7021
[部会名] 畜産
[専 門]  栽培
[対 象]  牧草類
[分 類]  研究

[背景・ねらい]
 寒地型イネ科牧草の生育適温は一般に15~20℃とされており、高温期間が長い温暖地では夏枯れにより被度の低下が見受けられ、これが草地荒廃の一因となっている。また、近年ロールベール体系の普及によりこれに対応する草種も求められている。そこで、主要な寒地型イネ科牧草9草種28品種を用い、放牧を想定した多回刈りでの生産性について5カ年にわたり調査を行い、温暖地における適応性について検討した。

[成果の内容・特徴]

  1. 合計乾物収量の品種平均値でみた草種の生産力はトールフェスクが最も高く、次いで、レッドトップ≧ケンタッキーブルーグラス≧オーチャードグラス≧リードカナリーグラス>ペレニアルライグラス≧ハイブリッドライグラス≧イタリアンライグラス≧フェストロリウムの順となった。短草型草種のレッドトップ、ケンタッキーブルーグラスやリードカナリーグラスは、オーチャードグラス並みかそれ以上の高い生産量が得られた(表1)
  2. 年次経過に伴なう冠部被度の減少程度は、ケンタッキーブルーグラス、トールフェスク、リードカナリーグラスで小さく、'94年夏期の高温、干ばつにも耐え、翌年春期の被度も高かった。ハイブリッドライグラス、フェストロリウム、イタリアンライグラスは被度の低下が著しく、造成3年目の'94年には20%以下となった(表1)
  3. リードカナリーグラス、ケンタッキーブルーグラス、トールフェスクは、春期収量割合が50%前後と低く、季節による収量変動が比較的小さい草種であった(図1)
  4. トールフェスクではナンリョウおよびファルコン、リードカナリーグラスではパラトンが、それぞれ収量性、永続性に優れる品種であった(表1)

[成果の活用面・留意点]

  1. リードカナリーグラスおよびケンタッキーブルーグラスは、造成初年目の春期の生育が劣ることから、利用開始時期を遅らせる。
  2. リードカナリーグラスは地下茎による強靱な繁殖力を持ち、耐湿性も高いとされていることから、棚田等低未利用地での低投入型放牧利用に向く草種である。

[その他]
 研究課題名:転換畑を活用した永年性牧草の短年利用体系の確立
 予算区分 :単県
 研究期間 :平成8年度(平成3~9年)
 研究担当者:中村照臣、小橋健
 発表論文等:山口県農業試験場研究報告No.48(投稿中)

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