天蚕飼料樹、ブナ科植物を加害する多食性鱗翅目害虫群の食域


[要約]
ブナ科植物を寄主とする多食性鱗翅目害虫がブナ科植物と併せて利用している食樹は、カバノキ科(ブナ目)、バラ目、ヤナギ目、クルミ目、イラクサ目、ヤマモモ目、ムクロジ目、マンサク目植物であり、天蚕と同様な食域を示す。
 滋賀県農業試験場・湖北分場
[連絡先]0749-82-2079
[部会名]近畿中国・蚕業
[専 門]作物虫害・飼育管理
[対 象]昆虫類
[分 類]研究

[背景・ねらい]
 天蚕の寄主植物は多くの目や科にわたる多食性であるが、通常の食樹はブナ科植物であり、幼虫はクヌギ、アベマキなどの落葉性コナラ属植物の葉を特に好んで食べる。これらの落葉性コナラ属植物には多種の鱗翅目害虫が発生し、天蚕繭の安定生産に大きな影響を与えている。そこで、天蚕の飼料樹適応選抜・系統育成の基礎資料を得るため、ブナ科植物を加害する多食性鱗翅目群の食域を分析し、天蚕とブナ科植物を寄主とする鱗翅目昆虫群の食性との比較考察を行う。

[成果の内容・特徴]

  1. 日本産ブナ科植物に属する19種を加害する鱗翅目害虫種数(野外記録+室内飼育記録+漠然的表現記録(”A種を食す”ではなく、”ブナ科を食す”等の表現))は624種であり、食域を分析したところ、ブナ科植物しか食しない単食性と寡食性とを併せたものは291種、そして、ブナ科以外の植物を食する多食性は333種である(表1)
  2. ブナ科植物を寄主とする鱗翅目昆虫がブナ科と併せて多く加害している食樹は、ブナ目に属するカバノキ科(116種)およびバラ目(218種)、イラクサ目(105種)、ヤナギ目(93種)、ムクロジ目(80種)植物である。
  3. 食樹的類縁分析では、多食性害虫がブナ科植物と併せて加害している食樹は、カバノキ科、バラ目、ヤナギ目、クルミ目、イラクサ目、ヤマモモ目、ムクロジ目、マンサク目、ケシ目である。これらはケシ目を除いて、他はブナ科植物と系統的類縁関係にある。
  4. 天蚕は、ブナ科のほぼ全種およびカバノキ科、バラ目、ヤナギ目、クルミ目、イラクサ目、ヤマモモ目、マンサク目、ムクロジ目に属する植物種の一部を食するが、ブナ目以外の植物目に関する食域には個体変異がある。

[成果の活用面・留意点]

 天蚕は、ブナ科植物を寄主とする鱗翅目昆虫群の典型的な食域を示す鱗翅目昆虫であると考えられ、今後、天蚕の摂食試験あるいは食樹的選抜により、 3. の植物目(ケシ目は除く)に属する種の中から、新飼料樹として、発見、育成の可能性がある。天蚕の食樹的系統育成を行うには、上記の成果の内容・特徴の 3. に属する植物目(ケシ目は除く)に属する種に絞って、摂食試験あるいは食樹的選抜を行うと効率的である。

[その他]
 研究課題名:天蚕繭の生産技術確立
 予算区分  :県単
 研究期間  :平成8年度(昭和58~平成8)
 研究担当者:寺本憲之
 発表論文等:Lepidopterous insect pest fauna of deciduous oaks, Quercus  spp.(Fagaceae), 
             food plants of the larva of Japanese wild silk moth, Antheraea yamamai (Ⅰ),
             Tyo Ga ,41(2),1990.
       日本産鱗翅目害虫食樹目録(ブナ科)、滋賀農試研報、別号1、1993.
       天蚕(ヤママユ)飼料樹、ブナ科植物を寄主とする鱗翅目昆虫相に関する研究、
             滋賀農試特研報、19、1996.

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