イチゴ新品種‘奈良7号’(出願名称‘アスカルビー’)の育成


[要約]
イチゴ‘アスカウェイブ’と‘女峰’を交雑して,新品種‘奈良7号’(仮称)を育成した。本品種はランナー発生が多い,花芽分化が早い,大果で果形の揃いが良い,食味が良い,収量性が高いなどの特長を有し,省力・多収・高品質生産が可能な促成栽培向き品種である.
奈良県農業試験場・栽培技術担当(野菜)
[連絡先]  0744-22-6201
[部会名]  野菜・花き(野菜)
[専 門]   育種
[対 象]   果菜類
[分 類]   普及

[背景・ねらい]
 奈良県の現在の主力品種‘とよのか’は日持ち性が高く,食味性に優れる反面,うどんこ病に極度に弱い,苗質による収量差が大きい,果実に着色むらが生じやすいなど,栽培上の問題点が多い。そこで,高果実品質に加えて多収かつ省力的な品種の育成をめざして,1991年より交配・選抜を進めた。

[成果の内容・特徴]

  1. 1992年4月に‘アスカウェイブ’に‘女峰’を交配して得られた約3,000の実生個体の中から,1993年1月に個体選抜を行って34個体を選抜した。1993~4年に系統選抜を行って1系統を選抜し,1994~5年に特性および生産力検定試験ならびに現地適応性検定試験を行った。その結果,食味が良いこと,多収であることに加え、ランナー発生が多い、草勢が強い、花芽分化が早い、大果で果形の揃いがよい,果皮が硬いなどの省力性が認められたので,1996年3月に品種登録を申請した。
  2. 草姿は中間で,草勢は‘とよのか’,‘アスカウェイブ’より強い。ランナーは太く,発生が多い(図1)。花芽分化は無仮植育苗の場合9月20日頃で,‘とよのか’,‘アスカウェイブ’より早い(表1)。促成栽培での開花始めは11月初旬で,収穫始めは12月上旬である。休眠は‘とよのか’と同程度で短く,5℃以下の低温要求量は約100時間である。
  3. 果形は短紡錘形で大果である。平均果重は‘とよのか’,‘アスカウェイブ’より重い。果皮色は鮮赤で,冬期・寡日照下では橙赤となる。果肉色は淡紅である。果皮は強く,光沢が良い。果肉は硬くて粘度が高く,多汁質である。
  4. 食味が良く,果実の糖度は‘とよのか’,‘アスカウェイブ’よりやや高く,酸度は‘とよのか’と同程度かやや高く‘アスカウェイブ’より高い(表2)。
  5. 促成栽培での収量性は‘とよのか’より高く,‘アスカウェイブ’と同程度であるが,初期収量が高く,平均果重が重い(表3)。
  6. うどんこ病抵抗性は中程度で,‘とよのか’より強い。

[成果の活用面・留意点]

  1. 萎黄病,炭そ病には罹病性なので,苗床の土壌消毒をはじめ育苗時の発病抑制に努める。
  2. 3~4月の食味低下防止のため,葉面積確保,肥効の維持,土壌水分の安定を図る。

[その他]
研究課題名 : 特産品の育種と増殖技術の開発
予算区分   : 県単
研究期間   : 平成9年度(平成4~9年)
研究担当者 : 泰松恒男、信岡 尚、西本登志、安川人央
発表論文等 : イチゴ新品種‘奈良7号’(仮称)の育成、園芸学会雑誌、66巻別冊2、1997.
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