不耕起乾田直播栽培における被覆肥料の溶出予測
- [要約]
- 不耕起乾田直播栽培(以下、不耕起直播)で被覆肥料(LP140)を施肥した場合、窒素溶出速度は温度だけでなく、乾田期間の土壌水分によっても影響される。不耕起直播における窒素溶出予測は地温と土壌水分を変数とすれば、精度が高まる。
岡山県農業総合センター・農業試験場・化学研究室
[連絡先] 08695-5-0271
[部会名] 生産環境(土壌・気象)
[専 門] 肥料
[対 象] 稲類
[分 類] 指導
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[背景・ねらい]
- 不耕起直播では、施肥労力の節減あるいは窒素利用率の向上のために被覆肥料が利用される。一般に被覆肥料からの窒素溶出速度は温度によって決まるが、不耕起直播では土壌水分の影響も考えられる。そこで、不耕起直播における窒素溶出予測手法を開発する。
[成果の内容・特徴]
- 窒素溶出特性値は乾燥(含水率12%)、適湿(同23%)、過湿(同35%)、湛水条件のそれぞれの水分条件で、20℃、25℃、30℃で静置培養して得た温度別窒素溶出曲線から反応速度論的解析により求められる。
- 窒素溶出速度定数(k)は土壌水分と密接な関係にあり、図1の回帰式から任意の土壌水分におけるkの値を知ることができる。
- 見かけの活性化エネルギー(Ea)は、土壌水分に関係なくほぼ一定である(図2)。
- 溶出開始までの期間は、土壌水分が23%以下で約14日、35%以上では約11日である。
- 被覆肥料を土壌表層に散布した場合と土壌中に混和した場合で、溶出速度は余り変わらない(図3)。
- 培養試験で得られた溶出特性値を用いて得た推定値を、ほ場の田面表層に並べた被覆肥料からの窒素溶出率を実測した値と比較したところ、施肥から湛水開始までは畑状態の溶出特性値を、それ以後は湛水状態の溶出特性値をそれぞれ用いて推定すれば実測値によく近似する(図4)。
- 溶出予測は、市販の表計算ソフトにモデル式と溶出特性値を組み込み、日平均地温及び土壌水分(湛水期間は100%)を変数として入力すれば可能である。
[成果の活用面・留意点]
- 地温は土壌表層の値を用いる。畑状態の土壌水分は精度がやや落ちるが,便宜的に平均的な値を用いてもよい。
- この手法は、現在流通している被覆肥料に適用可能であるが、シグモイドタイプの肥料では精度がやや落ちる。
[その他]
研究課題名:不耕起栽培における環境保全型施肥技術の確立
予算区分 :土壌保全
研究期間 :平成11年度(平成5~11年)
研究担当者:石橋英二、赤井直彦
発表論文等:反応速度論的方法によるコーティング窒素肥料の溶出評価、土肥誌、63巻6号、664-668、1992.
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