堆肥および化学肥料を施用した水田におけるδ15N値を用いた水稲の起源別窒素量の推定


[要約]
土壌、堆肥、化学肥料のそれぞれのδ15N値に差がある場合、堆肥の種類や化学肥料の施用量を変えて栽培された水稲体内Nのδ 15N値に違いが生じる。その変動を調べ、アイソトープマスバランス法で計算することにより圃場レベルでの水稲体Nの起源別N量の推定が可能である。
山口県農業試験場・生産環境部・環境保全グループ
[連絡先] 083-927-0211
[部会名] 生産環境(土壌・気象)
[専 門] 肥料
[対 象] 稲類
[分 類] 研究

[背景・ねらい]
 作物体のN同位体(15N/14N)の自然存在比(δ15N値)は、土壌や肥料資材のδ15N値を反映し、また、玄米のδ15N値と土壌のδ15N値が相関していることが報告されている。そこで土壌や肥料資材のδ15N値と稲体の窒素吸収量およびδ15N値を測定し、アイソトープマスバランス法で計算すると、稲体Nの起源別N量が推定されるため、これによって家畜糞堆肥や化学肥料の窒素利用率を推定する。

[成果の内容・特徴]

  1. 堆肥の種類および化学肥料の量を異にして水稲栽培を行った結果、各堆肥Ⅰ区では、堆肥のδ15N値が作付け前土壌のδ15N値より高いために、稲体Nのδ15N値は、作付け前土壌のδ15N値より高くなる(表1表2)。
  2. 各堆肥Ⅱ、Ⅲ区で、化学肥料の施用量が多くなるにつれて、δ15N値の低い化学肥料を多く吸収するために、稲体のδ15N値は各堆肥Ⅰ区より低下する(表2)。このように、稲体のδ15N値は、堆肥や化学肥料のδ15N値とN吸収量に相対的に影響を受ける。
  3. 堆肥を施用した場合の土壌由来N量は牛糞堆肥、鶏糞堆肥で同程度であり、豚糞堆肥では低くなる(表3)。
  4. 堆肥の窒素利用率は牛糞堆肥と豚糞堆肥で20~29%と同程度であり、鶏糞堆肥では10~12%と低くなる。鶏糞堆肥では、今まで行われた15N標識堆肥試験の結果とほぼ同じである(表3)。

[成果の活用面・留意点]

  1. 15N標識肥料試験を併用すると、施肥由来N量が求まり、各堆肥Ⅱ、Ⅲ区の土壌由来N量と堆肥由来N量も直接推定できる。

[その他]
研究課題名:環境保全型栽培基準設定調査
      木質堆肥連用による土壌養分の変化に即した水稲施肥改善試験
予算区分 :国補
研究期間 :平成8年度(平成5~9年)
研究担当者:徳永哲夫、福永明憲
発表論文等:日本土壌肥料学雑誌掲載予定

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