水稲採種栽培における穂肥施用量が長期貯蔵後の発芽率に及ぼす影響
- [要約]
- 穂肥無施用では貯蔵初期の発芽勢が劣るが種子として問題はなく、穂肥多施用では、籾水分が高い場合に発芽率の低下を招きやすいことから、長期貯蔵を考慮した場合では穂 肥施用量は控えることが好ましい。
兵庫県立中央農業技術センター・農業試験場・原種農場
[連絡先] 0790-66-2449
[部会名] 作物生産(育種・栽培)
[専 門] 育種
[対 象] 稲類
[分 類] 指導
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[背景・ねらい]
- 水稲の種子は、倒伏や成熟期の遅延により、外観品質を低下させるため、採種栽培にあたっては、窒素施用量は一般栽培より低く抑えられてきた。しかし、耐肥性の強い品種については、採種ほにおいても高い生産性を求める傾向が強くなってきている。そこで、採種栽培における穂肥施用量が発芽力に及ぼす影響を明らかにする。
[成果の内容・特徴]
- 穂肥無施用のN-0区は、穂肥標準施用のN-1区、穂肥・実肥4倍施用のN-4区に比べ、「コシヒカリ」「中生新千本」とも収穫5カ月後の発芽勢が劣るが、発芽率には差異は認められない。収穫8カ月後には、発芽勢の上昇がみられるが、「コシヒカリ」では発芽勢が低い傾向が認められる(表1)。
- 収穫後2年間常温で貯蔵すると発芽率は大きく低下し、いずれの処理区とも種子としての発芽率の基準である90%以下となる(表2)。
- 収穫2年後の低温貯蔵での発芽力は、穂肥の施用量よりも、水分含量の影響のほうが大きく、水分含量が低いほど発芽力は高く維持され、水分含量11%と17%との発芽率には有意な差が認められる(表2)。
- 水分含量が同じレベルでは、穂肥の施用量が多いほど発芽力の持続性の低下が大きく、種子の寿命が短くなる。この傾向は、水分含量が高いレベルほど顕著である(表2)。
- 発芽力の持続性には品種間差異がみられ、「コシヒカリ」は「中生新千本」より優っている。(表2)。
- 以上のことより、2年貯蔵後では、籾水分が高い「中生新千本」の種子で、穂肥施用量が多いほど発芽率が低下するので、採種栽培において穂肥の多施用は好ましくない。一方、穂肥無施用では、短期貯蔵の「コシヒカリ」種子で発芽勢は劣るが、発芽率には全く影響がみられないたため、少肥条件での種子生産には問題がないと考えられる。
[成果の活用面・留意点]
種子の安定供給が求められている現状では、長期間貯蔵する場合も多く、貯蔵期間中の事故等を考えると、窒素を控えめに施用し、採種農家での種子の安定生産をはかる。
[その他]
研究課題名:窒素含有率の異なる水稲種子(原種)の形質と発芽力
予算区分 :県単
研究期間 :平成11年度(平7~9年度)
研究担当者:上川 信行、二見 敬三、岩井 正志
発表論文等:窒素施用量が水稲種子の形質と発芽力に及ぼす影響、近畿中国農業研究、 94、8-12、1997.
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