液体回転培養による秋ギク「秀芳の力」優良母株の急速大量増殖技術


[要約]
秋ギク「秀芳の力」優良母株の茎頂を供試し、BA0.2+NAA0.02mg/l 添加したMS液体培地を用いた回転培養による急速大量増殖体系を確立した。大量増殖苗には培養変異は認められず、茎頂培養苗と同様に生育開花する。
広島県立農業技術センタ-・生物工学研究所・育種研究室
[連絡先] 0824-29-0521
[部会名] 生物工学
[専 門] バイテク
[対 象] 花き類
[分 類] 普及

[背景・ねらい]
 秋ギク「秀芳の力」は育成されてから長い年月を経過し、花径の小型化や生育の不揃い等、切り花品質の低下が問題となっている。この対策には優良系統の選抜が有効である。従来の茎頂培養は1茎頂から1個体を育成し、挿し芽繁殖で増殖するため苗生産に時間を要する。そこで、「秀芳の力」優良母株を早期に増殖普及するために茎頂からの多芽体誘導による急速大量増殖法を確立し、その実用性について検討する。

[成果の内容・特徴]

  1. 多芽体は、茎頂をBA0.2+NAA0.02mg/l 添加したMS液体培地に置床し、25℃、10,000 lx、24時間照明で回転培養(2rpm)を行うと効率良く得られる。
  2. 液体培地で誘導した多芽体の増殖には、BA0.2mg/l 添加のMS固形培地が有効であり、30日間培養後には10mm集塊4個に分割可能な大きさとなる。
  3. 増殖多芽体からの植物体再生は、ホルモンフリーMS培地に移植し、30日間培養後、再度分割して同一培地で培養を継続すると、順化時には増殖多芽体1集塊当たり14~17本の再生植物が得られる。
  4. 以上により、優良個体の1茎頂から4か月で240本の培養苗が育成できる(図1)。
  5. 多芽体増殖苗1本当たりの生産費は約100円であるが、順化後、セル成型トレイで母株として養成すれば、冬至芽から切り花栽培用の挿し穂が10本採取できる。
  6. 挿し芽繁殖苗の切り花栽培における形態的変異の発生はなく、季咲き、半電照、年末電照とその二度切り栽培の4作型における多芽体増殖苗の生育開花は茎頂培養苗と変わらない(表1)。また、切り花収穫時及び開花時の品質にも問題はない(表2)。

[成果の活用面・留意点]

  1. 本手法は、優良個体が短期間に大量増殖できる手法であり、他の品種や枝変わり個体にも利用が可能であると思われる。
  2. 多芽体増殖苗は、順化後セル成型トレイに植付け数週間後に、2℃で30日間の低温処理を行なうと生育が旺盛になる。

[その他]
研究課題名:野菜・花き優良株の低コスト種苗生産システムと栽培技術の開発
予算区分 :県単
研究期間 :平成11年度(平成8~12年)
研究担当者:古谷博
発表論文等:キク茎頂からの多芽体誘導による急速大量増殖、園芸学会雑誌68(別1)、480、1999.
      秋ギク'秀芳の力'多芽体増殖苗の切り花栽培における生育開花について、園芸学会雑誌68(別2)、497、1999.
      茎頂培養による秋ギク'秀芳の力'優良母株の急速大量増殖技術(第1報)、多芽体誘導による大量増殖、広島農技セ研報、67、31-39、1999.

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