アグロバクテリウム法によるナシ台木形質転換体の作出


[要約]
ナシ台木(マンシュウマメナシ)の子葉に感染力が強く、不定芽形成を促進するアグロバクテリウム野生株AKE10を選抜した。さらに、バイナリーベクターを保有するAKE10株により、子葉培養系を用いて形質転換体を作出する技術を開発した。
広島県立農業技術センター・生物工学研究所・育種研究室
秋田県立大学・生物資源科学部 附属 生物工学研究所
果樹試験場・カキ・ブドウ支場・上席研究官
[連絡先] 0824-29-0521
[部会名] 生物工学
[専 門] バイテク
[対 象] 果樹類
[分 類] 研究 

[背景・ねらい]
 近年、果樹でも多くの樹種で形質転換系が開発され、有用遺伝子の導入が可能になってきたが、日本ナシおよびその台木用系統については未だ成功例がない。当所ではナシ台木の改良に取り組んでおり、形質転換法を開発し優良台木の育成に役立てる。

[成果の内容・特徴]

  1. Agrobacterium tumefaciens 野生株AKE10は、マンシュウマメナシの子葉に感染処理を行った後、植物生長調節物質無添加の培地で培養すると、カルス形成率が最も高く不定芽形成を促進する菌株である(表1)。
  2. 形質転換は子葉培養系を用いて行い、形質転換体の選抜は不定芽形成時にカナマイシン20mg/l、シュート伸長時と発根時にカナマイシン50mg/l を添加して行う(図1)。
  3. 形質転換体はAKE10のTiプラスミドを保有する2菌株(AKE10/pGTNZWG「図2」、およびAKE10TC1/pGTNZWG)でのみ獲得でき、AKE10のTiプラスミドを保有しない他の2菌株では得られない。このことから、AKE10のTiプラスミドがマンシュウマメナシの形質転換には有効である(表2)。
  4. 形質転換を行った結果、カナマイシン耐性シュート13個体が得らた。この個体のPCR分析を行うと、正常形態の12個体からはGUS遺伝子のみが検出され、異常形態の1個体からはGUS遺伝子と野生株のT-DNA上の6b遺伝子が検出された(表2)。
  5. PCRで遺伝子を検出した形質転換体のうち、順化後の完全植物体5個体についてサザン分析を行ったところ、いずれの個体からもGUS遺伝子が検出され、形質転換体であることを確認した。

[成果の活用面・留意点]

     野生株のT-DNA上の遺伝子が導入されると葉が展葉しない等の形態異常が起こるため、形質転換体個々に野生株のT-DNA上の遺伝子の存在を確認する必要がある。

[その他]
研究課題名:既知有用遺伝子導入による育種素材の作出
予算区分 :県単
研究期間 :平成10年度(平成10~17年)
研究担当者:金好純子、土屋隆生、我彦広悦(秋田県立大学)、小林省蔵(果樹試験場・カキ・ブドウ支場)
発表論文等:アグロバクテリウムによるナシ台木形質転換体の作出、園芸学会雑誌、第67巻別冊2、207、1998.

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